【野村克也氏著書・「あ~ぁ、楽天イーグルス」レビュー ――記事の最後に自称野村マニアの私が点数をつけます^^】

ノムさんこと野村克也さんは2006年から09年シーズンまで楽天ゴールデンイーグルスの監督を務めました。「あぁ楽天イーグルス」はまさにその解任直後に書かれた本という面白さがあります。

どんな人格者といえど解任(実際は解雇。。)された直後にはマイナスな感情がないことはないでしょうし、その一区切りというときに55年という途方もない長い目で自分のプロ野球人生を総括する。目の前でノムさんが話しているような臨場感にあふれた本です。

今回はこの本の紹介の3回目。野村野球の遺産とは何かがはっきりとわかるものになっていると思います。

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ノムさん大好きな月見草パパです。人は自分と似た人を好きになるのでしょうか。長嶋茂雄さんのようなスターにはなれなくてもしっかりと実力で存在感を持って人に残す。そういうノムさんに自分を重ねては元気をいただいています。そのためにはもっともっと理論の勉強がいると思っていますよ。

●巨人V9監督 川上哲治さんに学ぶこと――“人を残す”

この本の最終章の6章は、プロ野球監督生活を終えたばかりのノムさんが自分のことをふりかえって書く貴重な読み物だと思います。監督生活が終わった瞬間にプロ野球人生を一気にふりかえる。ノムさんはこれまでのプロ野球人生から、強いチームをうみだす指導者は必ず「人」を作ったということを導き出します。

ノムさんは、楽天が球団創立1年目の最弱の状況だったのを見て、次は自分に監督の打診がくるのではと内心思っていたと書きます。「不遜な言い方になるかもしれないが、弱いチームを生まれ変わらせることができる監督は、いまやほとんどいないというのが日本のプロ野球界の現状だったからである」と思いを明かします。

そして「では、弱いチームを常勝チームに変えるためにもっとも大切なのは何か――人を残すこと」だろうと考えると推論をすすめます。

「その監督が教え、伝えたことを吸収し、実践できる選手やコーチをどれだけ残すことができるかが、監督のほんとうの価値を表すと信じている」「なぜなら、その監督のいわばDNAを受けた選手が近い将来コーチや監督となり、教えられたことにみずから学び、考え、培ったノウハウをプラスし、今度は自分が選手たちに伝えていく」「そして、それを受け継いだ選手がまた、指導者となって次代の選手に残していく――そういうシステムが築かれれば、たとえ選手は代わっても、ブレのない戦いができるようになり、毎年安定した成績を残せるようになる」と。監督の本当の価値は教えを次代の選手に受け継ぐことだと、そこまで考えて監督をされていたのかと知りとことん考えて生きているんだなあと感動しました。

そしてノムさんが尊敬する元巨人監督の川上哲治さんのことをふりかえり、川上巨人が空前絶後のV9をという偉業を成し遂げたときに人を残したことを確認します。その後の巨人の監督を務めた長嶋茂雄、王貞治、藤田元治、堀内恒夫、西武を率いた森祇明、オリックスの監督を務めた土井正三、日本ハムとヤクルト監督を務めた高田繁、森を支えた黒江透修をはじめコーチも含めればいくらでもいるとスラスラと往年の名選手の名前が出てきます。

ここでさらっと書いていますがノムさん自身も川上さんを参考にしたから自分も川上門下生といえると書いています。ノムさんが川上哲治さんをすごく尊敬されていることは有名ですが、自分をV9巨人の監督の門下生と言えるとまで思っていたこと(!)は初めて知りました。

ではなぜ川上さんがこれほど多くの人材を残せたかというと、そこはやはり人間教育にあったと分析をすすめます。川上さんはミーティングで野球の話をほとんどせず、野球人である前に、人間としてどうあるべきかという話に大半が費やされたと、ノムさんは友人の森祇晶さんから聞き、「わが意を得たり」と思ったといいます。川上さんは感謝の心を忘れないようにと話されていたということ。

周囲に影響を与えやすいスター選手であるほど、厳しく指導しなければならない。だから川上さんは長嶋、王たりともいっさい特別扱いせず、厳しく接したと。人格者ですよね。これは王さんから聞いた話だといいます。

●ノムさんを受け継いだ選手たち

ノムさんは視点を自分に移して、自分はどうかと振り返ります。自分にも人を残したといえるものがあるのではないかと。

そこでヤクルト時代にノムさんの指導を受けてから分厚いノートをつけるようにして今も解説者としてノートを持ち歩いている池山隆寛元選手、データの活用や心理戦を野村監督から学んだという広澤克実選手は巨人移籍後に「こういうときにノムさんはどうするんだ」とよく聞かれたというエピソードをあげ、「そういう意味では自分のDNAは巨人にも移っているかも」という話は、上記の「川上門下生かも」に続いて興味深いものです。何せノムさんと巨人はそんなに交わらないというイメージを持ちがちでしたから。。

のちに西武の監督をすることになる渡辺久信投手がヤクルト時代に野村監督から学んだこと、阪神時代にも野村ノートを持ち歩く遠山奬志選手などがうまれたこと、ヤクルト、阪神、楽天とコーチとしてささえてくれた松井優典氏は、実はID野球の命名者(データを活かすということを英語にすると?とノムさんが聞いたのを松井さんが「インポート・データですかね」といったことからID野球という言葉が生まれた)だったことも語られます。そしてずっと書いてきたように楽天の選手へたくさんのことが教えられたのです。まーくんこと田中投手、嶋捕手とその後の星野楽天で日本一のチームになって野村野球の遺産は花開いていきました。

●プロ野球生活最後の日に起こった胴上げ

この本の最後の読みどころは「おわりに」だと思います。楽天監督解雇をつげられ、クライマックスシリーズの負けが決まったその日に55年のプロ野球生活を終えました。
そこでなんと予想外のことが。楽天の選手から、そして相手チームの日本ハムの選手と梨田監督までもがみんなでノムさんを胴上げしたのです。球場は「ノムラ ノムラ」の大コール

【巻末には、監督最後の日の楽天と日本ハムの選手から胴上げの写真が。ノムさんうれしそうです】

ノムさんは、こうしめくくります。

「私は5回宙に舞った」ここで胴上げしてくれた選手たちは野村のDNAを受け継いだ選手の名前が次々でてきます。「山﨑が、田中が、草野が、岩隈をはじめとする楽天の選手たちが、ヤクルト時代の教え子である吉井が、稲葉が、シダックス時代の武田勝が私の身体を支え、心から別れを惜しんくれている。更に嬉しかったのは梨田監督までが胴上げに参加してくれたことである」「ぼやきながらも畑を耕し、水と肥料をやり、ときには厳しい態度をとりながら少しずつ育てていった種たちが、いましっかりと根を張りつつあり、大輪の花を咲かせようとがんばっているではないか」

そしてこれからも野球について考えていくのだろうと述べ、「野球とはなんぞや」その答えをなんとかして墓場にいくまでにみつけたいと思いながらと締めくくります。

御年82歳。この6月で83歳になられる。まだまだまだまだお元気なボヤキを聞きたいものです。

<文献データ>

「あぁ、楽天イーグルス」 2009年12月初版

【===月見草パパの採点=== 82点

野球を知り尽くしたベテラン監督が最弱なチームをどう再生していくのか。ボヤキにこめられたものは期待であり、最後の野村野球が遺産として受け継がれている確信と多くの選手から愛された胴上げには涙がでました。この本は楽天の変化を知る野球ファンには最高に面白いと思います。ただそれだけ尖っているところも多く、誰もが気軽に読める本ということではなさそうです。だが、それがいい。つまりノムさんファンにおススメの本だと思うのです。

 

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