今週(2021年6月18日)のNHKテレビ番組『チコちゃんに叱られる!』の中で、子供たちが注射をものすごく怖がる理由を、チコちゃんが問題と答えで教えてくれました。それによると、


問題:なんで子供のころはイヤだった注射が 大人になると平気になるの?
答え:痛みが10分の1になるから


・・・それはつまり、逆を言うとこどもの時期は大人の10倍痛みを強く感じているということですよね!? それはもう子供たちが注射のたびに大泣きしてもしかたないわけです。
これはなんとかしなければ。
ということで、子供がなぜそんなに注射を痛いと感じるのか、そして少しでもその痛みを軽くしてあげることはできないだろうか、いろいろ調べてみました。何かお役に立てれば嬉しいです。

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注射が痛い理由

注射の痛みってどうやって感じているのでしょう?

人間の皮ふがキャッチできる感覚には5種類あります。
・痛い(痛覚)
・触れている(触覚)
・圧迫されている(圧覚)
・冷たい(冷覚)
・温かい(温覚)


こうした感覚をキャッチするために、全身の表面に感覚点というポイントがたくさんあります。5種類の感覚点の中で、痛みを感じとる痛点が一平方センチメートルあたり約100~200個といちばん数が多いです。次に多いのは何かが触れているのを感じる触覚点ですが、痛点はそれより4~8倍はあると言われています。
痛点は全身の表皮に分布しています。体が傷ついたとき、痛点から「ケガしたぞ!」という痛みの情報が、表皮から脊髄を通ってすぐさま脳へ送られます。そのおかげで私達は命を守るための行動を起こすことができるのですね。


ところで、注射をしたときも同じように、皮膚の痛点が「ケガしたぞ!」と信号を送るのですが、子供の場合、皮膚からの信号が脊髄に入ろうとするときに、まだその信号を上手にキャッチする神経が十分に発達していないのです。
大人は脊髄の入り口の神経がしっかり分かれて発達しているので、皮膚から届いた痛みの位置や強さなどの情報を正確に伝えられます。
けれど、子供の神経はまだそれほど分かれて発達していません。そのため針を刺された痛みの信号が入ってきたときに、脊髄入り口あたりの神経がどれもこれもいっしょくたに刺激されてしまうのです。そのため、注射された子供は大人より数倍も強く痛みを感じてしまうことになるのです。


ちなみに、子供の成長と痛みの感じ方を調べた研究によれば、男女ともに7~9歳ごろから、痛みの感じ方が10分の1ほどになっていくことがわかっています。このくらいの時期に、痛みの信号を送るための脊髄の入り口の神経が、大人のようにしっかり分かれて発達していくのですね。

注射の前にできること

神経がまだ発達しきっていないことでこどもたちはよけいに痛みを感じてしまいますが、それ以外にも、不安な気持ちが痛みをもっとひどくすることはよく知られています。そこは大人も同じですね。
こどもが注射嫌いにならないために、できるだけ痛みを感じさせないようにしてあげたいものです。
注射の前に、こどものためにしてあげられることを3つご紹介しますね。



★注射の絵本を読んであげる★
注射はどの子にとっても逃げ出したくなるような怖いもの。
でも、絵本のなかでも自分のような子供たちががんばって注射を受けていたり、優しいお医者さんが注射がなぜ大切なのかを教えてくれてたりします。
きっと子供たちはそんな絵本を読みながら、怖いけど今度の注射はちょっとがんばってみよう!と思ってくれるのではないでしょうか。
お薦めは・・・


『かえるのよぼうちゅうしゃ』
作:さくら ともこ
絵:せべ まさゆき
出版社:PHP研究所
かえるむらで、かえるたちがはじめての予防注射を受けることになります。みんな怖くてたまりません。でも、がま先生が注射は大切なこと、それにちょこっと痛いだけですぐ終わるってことをちゃんと教えてくれます。
絵柄がカラフルで楽しいです。

『つぎはわたしのばん』
作・絵:いもとようこ
出版社:金の星社
こちらも動物たちがお医者さんの診察室の前で、予防注射の順番を待っています。やっぱりみんな怖いんです。呼ばれて一匹ずつ診察室に入っていっても、みんなどうしても注射されたくなくて、さぁ大変。そんななか、最初に勇気を出して注射できたのは・・・?
いもとようこさんの絵は、動物たちがいつもふわふわと柔らかく描かれていて、本当に可愛らしいです。

『どきどきよぼうちゅうしゃ』
作:小林 まさこ
絵:おかべりか
出版社:あかね書房
今日はりこちゃんが予防注射を受ける日です。りこちゃんは朝からとってもブルー。でもお医者さんがりこちゃんの怖がる気持ちをよくわかってくれて、なぜ予防注射ってしなきゃいけないのか話してくれます。
りこちゃんの表情に、素直なこどもの気持ちがよく表れていて、そうだよね~とうなずいてしまいます。


★ごっこ遊びで注射に慣れる★
人間は知らないものやことを怖がります。注射ってどのくらい痛いのか、どのくらい時間がかかるのか、どんなところで注射するのか、何もわからなかったら子供心にとても恐ろしくなっても不思議ではありません。
おうちで家族いっしょに楽しくお医者さんの役や注射される子供の役をやりながら、注射って別に怖くないんだよ、すぐ済むよ、と話してあげましょう。
また子供たちも、自分が注射されるだけでなく注射するお医者さん側にまわってみるのは、意外におもしろく感じるかもしれません。
大泣きする子に注射するお仕事って大変なんだな、とか、自分は大きくなったら絶対こどもを怖がらせないお医者さんになるぞ!と新たな夢を抱く子も出てくるかもしれませんね。



★注射するときに意識をそらす★
お気に入りの本やぬいぐるみ、おもちゃなどを持っていって、こどもが遊びに夢中になっているあいだに注射すると、痛みを感じにくいといいます。ほかの理由で泣いているときでも、なにか面白いおもちゃなどを持ってきて差し出すと、今まで泣いていた子が一瞬でそれを忘れてしまい楽しくおもちゃで遊びだす、というような経験はだれもがお持ちでしょう。

注射の後にできること

★痛かったところにそっと触れる★
注射のあとは、痛かったところに優しく手を当ててあげると、痛みよりも、優しく触れられた感覚の方へ意識がそらされて、痛みを感じにくくなるといいます。
体をどこかにぶつけて痛いとき、人は反射的に痛む部分をさすりますよね。そうすると痛みが和らぎます。これは脳が痛みだと認識しているものを、触られているという認識に変換することで痛みを抑制することができるという、ゲートコントロール理論と呼ばれる脳の働きによるものです。「痛いの痛いの、飛んでいけ~」ですよね。
そうして痛かった注射も、がまんしたらそのあとで優しく手を当てられて嬉しかった、というところまでつながった記憶になれば、きっとこどもは次に注射されるときにもまたがんばってみようという気持ちになってくれることでしょう。



★好きなものを食べる★
痛い注射をがんばったごほうびに、大好きなものを食べて幸せになりましょう。なにしろ子供たちは大人の10倍痛い思いを辛抱したのですから、おおいに褒めて元気にしてあげたいものです。注射が怖かった、でもがんばって打ってもらった、そしたら褒められて特別に美味しいものも食べられた、というハッピーエンドの記憶を作ってあげてください。子供たちにとって注射という困難なイベントを、辛いことを乗り越えて強くなり幸せを手に入れたという経験に変えられる、素敵なチャンスです。

まとめ

・子供は痛みを感じる神経が未発達なので、注射の痛みを大人よりずっと強く感じてしまいます。
・注射の日の前から子供が心の準備ができるよう、絵本を読んであげたり一緒にごっこ遊びをしてあげましょう。
・注射をがんばった子供を思いきり褒めてあげましょう。痛かったところを優しくなでたり、ごほうびに大好きなものを食べさせてあげて、とってもがんばったねと一緒に喜んであげましょう。