沖縄方言の悪口には、フラー(ばか)、ユクサー(うそつき)、ヤナカーギー(容姿をけなす言葉)などがあります。ただし、聞き慣れない沖縄の言葉が、すべて悪口というわけではありません。
悪口を中心に、からかい・叱る言葉・威嚇に使われる関連表現まで50項目を、意味と短い例文・日本語訳で紹介します。
対象は沖縄本島のことばを中心とした表現です。辞典に見られる言葉も含むため、全語が現在の日常会話で頻繁に使われるわけではありません。地域・世代で言い方や受け取り方が異なり、宮古・八重山を含む沖縄全域で通じるとは限りません。
例文は意味をつかむために作った、共通語に方言を交えた短い作例です。伝統的な方言だけで構成した会話の再現ではありません。表記違いや語尾の違いは同じ項目にまとめています。
ばか・うそつきなど、人を直接けなす言葉
1. フラー
意味:ばか、あほ
例文:そんな危ないことをするなんて、フラーだよ。
→ そんな危ないことをするなんて、ばかだよ。
「ヤナフラー」という言い方もあります。
2. フリムン
意味:ばか者、愚か者
例文:無理に飛び越えようとしたら、フリムンと言われた。
→ 無理に飛び越えようとしたら、ばか者と言われた。
3. ゲレン
意味:ばか、常識外れだと相手をけなす言葉
例文:人の物を壊して笑うなんて、ゲレンか。
→ 人の物を壊して笑うなんて、ばかなのか。
強い侮辱になり得るため、人の精神状態や能力を決めつける呼び名にはしないでください。
4. ウフソー(ウーソー)
意味:間抜け、おっちょこちょい、あわて者
例文:財布を持たずに買い物に来た。ウフソーだったね。
→ 財布を持たずに買い物に来た。うっかりしていたね。
「かわいい天然の人」とは限らず、見下す意味にもなります。
5. ユクサー
意味:うそつき
例文:さっきと言っていることが違う。ユクサーじゃないの?
→ さっきと言っていることが違う。うそつきじゃないの?
驚いて「本当?」と返すように使う場合もあります。
6. フユーナー
意味:怠け者、不精な人
例文:片付けを全部任せて、フユーナーだな。
→ 片付けを全部任せて、怠け者だな。
7. ハジチラー(ハジフラー)
意味:恥知らず
例文:勝手に持ち帰るなんて、ハジチラーだ。
→ 勝手に持ち帰るなんて、恥知らずだ。
単に「恥ずかしがらない人」という意味ではありません。
8. ヤナワラバー(ヤナワラバァ)
意味:悪ガキ、くそガキ
例文:また窓に落書きして、ヤナワラバーだね。
→ また窓に落書きして、悪ガキだね。
「ワラバー」は子ども。「ヤナ」が付くと悪く言う表現になります。
9. ヤナムン
意味:悪者。嫌なやつ。文脈によっては妖怪や悪霊。
例文:人をだまして平気だなんて、ヤナムンだ。
→ 人をだまして平気だなんて、嫌なやつだ。
怪談や信仰の話では、妖怪・悪霊を意味する場合もあります。
この章の注意:親しい間柄の軽口でも、人を直接けなす言葉です。口調や関係によって響きが変わります。
性格や態度を悪く言う方言
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10. イバヤー
意味:威張る人、見栄っ張り
例文:自分だけ偉いみたいに話して、イバヤーだね。
→ 自分だけ偉いみたいに話して、威張り屋だね。
11. ナマジラー
意味:図々しい人
例文:何度もおごってもらおうとして、ナマジラーだ。
→ 何度もおごってもらおうとして、図々しい人だ。
12. イビラー
意味:けちな人、けちんぼ
例文:少しも分けないなんて、イビラーだね。
→ 少しも分けないなんて、けちだね。
13. チムハゴー(チムハゴーサン)
意味:ずるい、心が汚い
例文:自分に都合のいい約束だけ守るなんて、チムハゴーだ。
→ 自分に都合のいい約束だけ守るなんて、ずるい。
物の汚れではなく、心や行いへの否定です。
14. クサブックヮー
意味:生意気な人
例文:少し意見を言っただけで、クサブックヮー扱いされた。
→ 少し意見を言っただけで、生意気な人扱いされた。
15. ゲーサー
意味:反抗する人、反抗的な者
例文:口答えをしたら、ゲーサーと言われた。
→ 口答えをしたら、反抗するやつと言われた。
16. クファチブル
意味:石頭、頭の固い人
例文:別のやり方もあるのに、クファチブルだな。
→ 別のやり方もあるのに、頭が固いな。
頭の形ではなく、考え方の柔軟さを批判する表現です。
17. タンチャー
意味:短気な人
例文:少し待つだけで怒るなんて、タンチャーだね。
→ 少し待つだけで怒るなんて、短気だね。
18. ハーダーリー
意味:無責任な人
例文:途中で全部放り出すなんて、ハーダーリーだ。
→ 途中で全部放り出すなんて、無責任だ。
19. ヤッケームン
意味:厄介者、面倒な人
例文:話を毎回こじらせる、ヤッケームンだね。
→ 話を毎回こじらせる、厄介な人だね。
20. ジャーフェームン
意味:手に負えない人
例文:何度説明しても騒ぎ続けて、ジャーフェームンだ。
→ 何度説明しても騒ぎ続けて、手に負えない人だ。
21. チラヌカーアチー
意味:面の皮が厚い。恥知らず。
例文:迷惑をかけたのにまた頼むなんて、チラヌカーアチーだね。
→ 迷惑をかけたのにまた頼むなんて、面の皮が厚いね。
顔の見た目ではなく、恥じない態度をとがめます。
22. ボーチラー
意味:わがまま。自分の思いを通そうとする人。
例文:自分の希望ばかり通そうとして、ボーチラーと言われた。
→ 自分の希望ばかり通そうとして、わがままだと言われた。
23. シプタヤー
意味:しぶといやつ。しぶとい人。
例文:断っても何度も頼みに来るなんて、シプタヤーだね。
→ 断っても何度も頼みに来るなんて、しぶとい人だね。
粘り強さを認める文脈もあり、必ず悪口になるわけではありません。
24. リンチャー
意味:やきもちやき。嫉妬する人。
例文:ほかの友達と話すだけで怒るなんて、リンチャーだね。
→ ほかの友達と話すだけで怒るなんて、やきもちやきだね。
この章の注意:性格への決めつけになりやすい言葉です。困った行動を具体的に伝えるほうが、用件は明確になります。
口の悪さ・不満・信用に関する言葉
25. クチハゴー
意味:口汚い、口汚く話す人
例文:人をけなしてばかりで、クチハゴーだよ。
→ 人をけなしてばかりで、口が悪いよ。
口の汚れや口臭ではなく、話し方を指します。
26. ヤナグチャー
意味:口の悪い人。毒舌な人。
例文:会うたび人の欠点を言うので、ヤナグチャーと言われている。
→ 会うたび人の欠点を言うので、口の悪い人と言われている。
「ヤナグチ」は悪口。「ヤナグチャー」はそれを言う人を指します。
27. アンダグチャー
意味:お世辞ばかり言う人
例文:頼みごとの前だけ褒めるなんて、アンダグチャーだね。
→ 頼みごとの前だけ褒めるなんて、お世辞ばかりだね。
「褒め上手」と同じ意味ではありません。
28. アーパッパー
意味:考えなしに物を言う人、間抜けな発言をする人
例文:相手の前でそんなことを言うなんて、アーパッパーだ。
→ 相手の前でそんなことを言うなんて、考えなしだ。
単なるおしゃべり好きではなく、発言の中身への悪い評価を含みます。
29. ジーグヤー(ジークーヤー)
意味:不平を繰り返す人、難癖を付ける人
例文:何を出しても文句ばかりで、ジーグヤーだね。
→ 何を出しても文句ばかりで、不満ばかり言う人だね。
30. バラサー
意味:秘密をばらす人、ちくり屋
例文:内緒だと頼んだのに、バラサーだな。
→ 内緒だと頼んだのに、秘密をばらす人だな。
危険やいじめの相談まで「ちくり」として責める使い方は避けましょう。
31. ヌスラー(ヌスドゥ)
意味:泥棒、盗む人
例文:人の財布を持っていくなんて、ヌスラーだ。
→ 人の財布を持っていくなんて、泥棒だ。
犯罪行為をしたと決めつける言葉です。根拠なく人をこう呼ばないようにしましょう。
弱さや振る舞いをからかう言葉
32. シカボー
意味:臆病者、気の小さい人
例文:怖くて近寄れないと話したら、シカボーと笑われた。
→ 怖くて近寄れないと話したら、臆病者と笑われた。
33. ヨーバー
意味:弱い人、弱虫
例文:勝負に負けて、ヨーバー扱いされた。
→ 勝負に負けて、弱虫扱いされた。
恐れや気の小ささを表す「シカボー」に対し、こちらは弱さを表します。
34. トゥルバヤー
意味:ぼんやりした人、ぼんやり者
例文:降りる駅を過ぎて、トゥルバヤーと言われた。
→ 降りる駅を過ぎて、ぼんやり者と言われた。
35. ソーヌガー
意味:そそっかしい人、あわて者
例文:鍵を置いた場所を忘れて、ソーヌガーだと笑われた。
→ 鍵を置いた場所を忘れて、そそっかしい人だと笑われた。
ここでは沖縄本島の用例を紹介しています。地域によって「間抜け」などの訳もあります。
36. フンデー
意味:わがままな子ども、ぐずる幼い子
例文:お菓子が欲しくて、今日はフンデーになっているね。
→ お菓子が欲しくて、今日はぐずっているね。
幼い子には必ずしも強い悪口ではありませんが、大人には子ども扱いの非難になります。
37. オーヤー
意味:よくけんかする人、けんかの強い人
例文:すぐけんかを始めるから、オーヤーと呼ばれている。
→ すぐけんかを始めるから、けんか好きと呼ばれている。
けんかの強さを語る文脈もあり、常に悪口とは限りません。
38. サキクェー
意味:酔っぱらい、飲んだくれ
例文:また酔って約束を忘れるなんて、サキクェーだね。
→ また酔って約束を忘れるなんて、飲んだくれだね。
単に酒好きという意味の「サキジョーグー」とは区別します。
39. カマジサー
意味:無愛想な人。表情や愛想が乏しい人。
例文:あいさつしても知らん顔で、カマジサーと言われていた。
→ あいさつしても知らん顔で、無愛想な人と言われていた。
40. ブクー
意味:不器用。物事を器用にこなせないこと。
例文:ひもを結ぶのが遅くて、ブクーと笑われた。
→ ひもを結ぶのが遅くて、不器用だと笑われた。
不器用な状態の説明にもなりますが、失敗を笑うと悪口になります。
41. ナチブサー(ナチブー)
意味:泣き虫。すぐに泣く人。
例文:負けて泣いたら、ナチブサーとからかわれた。
→ 負けて泣いたら、泣き虫とからかわれた。
この章の注意:失敗・泣くこと・怖がることを笑ったり、固定のあだ名にしたりすると、相手の負担になります。
汚さや容姿をけなす言葉
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42. ハゴー(ハゴーサン)
意味:汚い、不潔だ
例文:そのまま手でつかむのは、ハゴーだよ。
→ そのまま手でつかむのは、汚いよ。
物の汚さを指す場合と、人そのものを「汚い」とけなす場合では受け取り方が違います。
43. ヤナカーギー
意味:不細工だと容姿をけなす言葉
例文:写真を見せたら、ヤナカーギーとからかわれた。
→ 写真を見せたら、不細工だとからかわれた。
容姿への直接的な悪口です。気軽な比較や冗談には使わないようにしましょう。
怒ったときの言葉・命令・威嚇表現
44. カシマサン(カシマサイ)
意味:うるさい、やかましい、わずらわしい
例文:何度も横から口を出して、カシマサイ。
→ 何度も横から口を出して、うるさい。
音の大きさだけでなく、相手をわずらわしく感じる場合にも使います。
ほかの地域との違いは、全国の「うるさい」の方言一覧でも紹介しています。
45. アビランケー
意味:言うな、騒ぐな、黙れ
例文:もうその話はするな。アビランケー。
→ もうその話はするな。黙れ。
穏やかなお願いではなく、相手の発言を止める命令です。
46. ウシェール(ウシェーてる)
意味:ばかにする、なめる、侮る
例文:約束を何度も破って、こっちをウシェーてるの?
→ 約束を何度も破って、こっちをばかにしているの?
「ウシェーてる」は共通語の語尾と混ざった形。単なる「ムカつく」とは意味が異なります。
47. クヌヒャー
意味:こいつ、この野郎
例文:クヌヒャー、何をしているんだ。
→ この野郎、何をしているんだ。
人を中立的に呼ぶ言葉としては不向きです。
48. クルス・タックルス
意味:殺す、たたき殺す/やっつけるという強い威嚇
例文:口論の途中で「クルス」と怒鳴られた。
→ 口論の途中で「殺すぞ」という強い言葉を浴びせられた。
「クルスンドー」「タックルサリンドー」などの形もあります。冗談でも暴力の予告として伝わり得ます。
49. タッピラカス
意味:たたきつぶす
例文:「タッピラカス」とすごまれて、その場を離れた。
→ 「たたきつぶす」とすごまれて、その場を離れた。
相手に向ければ強い脅しになります。言われて怖いときは距離を取りましょう。
50. メーゴーサー
意味:げんこつ。拳で頭などをたたくこと。
例文:メーゴーサーするぞと言われて、身を引いた。
→ げんこつをするぞと言われて、身を引いた。
語そのものは悪口ではなく、お仕置きなどの関連語。相手に向けると暴力をほのめかす言い方になります。
悪口と間違えやすい沖縄の言葉
次の言葉は、音の印象だけで悪口と判断しないほうがよい表現です。上の50項目とは別に、聞き分けの目安として紹介します。
- ヌー:「何」などを尋ねる言葉。質問そのものは悪口ではありません。
- ワジワジー:腹立たしさやいらいらした気持ち。相手を呼ぶ悪口とは区別します。
- シニ:程度を強める「とても」「すごく」という使い方があります。「死ね」と同じ意味に受け取らないようにしましょう。
- ウーマクー:わんぱく・いたずらっ子。親しみを込める場合も、いたずらをとがめる場合もあります。
- ガチマヤー:食いしん坊。食欲についての言葉ですが、本人が嫌がる呼び方ならからかいになります。
- ニーブヤー:眠たがる人・よく眠る人。直ちに「怠け者」と訳すのは適切ではありません。
- ユンタクー:おしゃべりな人。「口汚い人」と同じ意味ではありません。
使うとき・言われたときの注意点
冗談かどうかは、言葉だけでは決まらない
親しい人同士が笑いながら交わす場合でも、別の相手に同じ言葉を使えるとは限りません。声の強さ、表情、直前の出来事、普段の関係を合わせて受け取る必要があります。文字だけのメッセージでは、その手がかりが少なくなります。
容姿や能力への呼び名にしない
ヤナカーギーのような容姿をけなす言葉や、失敗・泣くこと・怖がることを笑う呼び方は、繰り返すほど相手の負担になります。「沖縄の方言を覚えたから」と人に試すより、聞いた言葉の意味を理解するために使うのがよいでしょう。
怒りを伝えるなら、困っている行動を具体的に
「フユーナーだ」と決めつけるより「使った物を片付けてほしい」、「カシマサン」と怒鳴るより「今は少し静かにしてほしい」のほうが、何を変えてほしいかが伝わります。方言を避けるというより、相手の人格を責めずに用件を伝える工夫です。
脅す言葉を言われたら、言い返すより距離を取る
クルスやタッピラカスなどは、意味として暴力を含みます。実際に怖さを感じる状況では、冗談か確認しようとして近づく必要はありません。その場を離れ、近くの人に助けを求めてください。
自分が言いすぎた場合は「冗談なのに」ではなく、何を言ってしまったかを認めて謝ることが大切です。地域ごとの言い方に関心がある方は、「ごめんなさい」の方言一覧もご覧ください。
沖縄方言の悪口についてよくある疑問
フラーとフリムンは、どちらがきつい?
どちらも人をばかにする意味で使われますが、いつでも一方が強いとは決められません。呼びかけ方や口調で受け取り方が変わります。「軽いほうなら誰に言っても大丈夫」という使い分けは避けましょう。
沖縄の悪口は、ヤンキーが使う言葉なの?
沖縄方言の悪口全体を、ヤンキーだけの言葉とすることはできません。性格を評する語、子どもへのからかい、古くからある表現など、出てくる場面はさまざまです。けんかの場面に登場する言葉も、その語だけで話し手の属性が分かるわけではありません。
「悪口」そのものは沖縄方言で何という?
「ヤナグチ」という言い方があります。悪口や乱暴な言葉を表し、それを言う人は「ヤナグチャー」と呼ばれます。この記事では人を評する言葉として、ヤナグチャーを一覧に入れています。
宮古島や石垣島でも同じ意味で使う?
沖縄本島・宮古・八重山には、それぞれ地域のことばがあります。本島中心の一覧をそのまま各島の言葉として扱うことはできません。同じように聞こえる語でも、地域の用例を確かめる必要があります。
友達に言われたら、悪意があると思ってよい?
一語だけで断定はできません。ただし、自分が嫌だったことは伝えて構いません。「その呼び方はやめてほしい」と具体的に伝え、繰り返される場合は距離を置くなど、関係を見直す判断材料にしてください。
まとめ
沖縄方言の悪口は、ばか・うそつきといった直接的な非難だけでなく、態度への批判、からかい、怒ったときの命令などに分けると理解しやすくなります。同じ意味に見える言葉も、人を指すのか、状態や行為を指すのかに違いがあります。
まずは聞いた語の意味を確認し、相手との関係や場面に照らして受け取ってください。挨拶や親しみのある表現も広く知りたい方は、沖縄の方言一覧で紹介しています。