感謝をあらわす言葉「ありがとう」。
日本各地には「ありがとう」だけでなく、感謝の気持ちをあらわすいろんな方言があります。
もしかしたら他県の人と話していて、感謝の気持ちがうまく通じないなあ、ということもあったかもしれませんね。
そこで今回は、日本各地の「ありがとう」の方言を都道府県別にまとめ、方言の分布などについても調べてみました。
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都道府県別「ありがとう」方言一覧
こちらに書いているのは代表的な方言です。
同じ県内でも地域や世代によって方言が異なるので、ここにまとめた言葉以上にたくさんの「ありがとう」があります。ご了承ください。
北海道 | ありがと | 青森 | めやぐだ、ありがとうごす |
岩手 | おおきに(宮古地方)、ありがとがんす | 秋田 | おぎに、わり |
山形 | もっけだの(庄内地方)、ありがとさま | 宮城 | ありがとうござりす、どうもねー |
福島 | ありがとない | 栃木 | あんがと |
茨城 | わりぃね、どうもね | 千葉 | ありがとう |
埼玉 | あんがと | 東京 | ありがとう、あんがと(江戸言葉) |
神奈川 | ありがとう | 群馬 | ありがと |
新潟 | ありがとね | 富山 | きのどくな |
石川 | きのどくな | 長野 | ありがとー(「と」のイントネーションを上げる) |
岐阜 | おおきに | 山梨 | ありがたいんでごいす |
静岡 | ありがとっけねー | 愛知 | ありがとう(「が」にアクセント) |
福井 | おおきに | 滋賀 | おおきに、おせんどさん |
三重 | おおきんな | 京都 | おおきに |
大阪 | おおきに、まいどー | 奈良 | ありがとう(「と」にアクセント) |
和歌山 | おおきに、ありがとやで | 兵庫 | ありがとお |
鳥取 | だんだん | 島根 | だんだん、ありがとー |
岡山 | ありがとう | 広島 | ありがとう |
山口 | ありがとう | 香川 | ありがとう |
徳島 | どちらいか | 高知 | おおきに |
愛媛 | だんだん | 福岡 | おおきに、ありがと |
大分 | おおきに | 熊本 | だんだん(球磨地方) |
宮崎 | おおきん | 鹿児島 | あいがて、あいがとさげもした |
佐賀 | あいがと、おおきに | 長崎 | どうも、おおきに |
沖縄 | にふぇーでびる |
日本全国「ありがとう」の大まかな分布
「ありがとう」は各地でいろんな方言がありますが、「ありがとう」から派生した以外の方言を分類すると、大まかに3つに分かれます。
おおきに(近畿、鹿児島以外の九州、高知、岩手の宮古地方、秋田、岐阜など)
「おおきに」は言わずと知れた、関西地方の「ありがとう」ですね。
不思議なことに、関西地方から遠く離れた東北方面で「おおきに」が使われています。
これは昔、港町として栄えた地域で関西と船で行き来があり、関西の商人が使う「おおきに」が東北でも広まったのではないか、と言われています。九州も同じ理由かもしれないですね。
同じ「おおきに」でも、その地方の訛りでちょっと変わった言葉になっていて面白いです。
おぎに(秋田)
たとえば秋田では、「ありがとう」を「おぎに」と言います。
秋田弁はおもに、「か」行と「た」行に濁点をつけて話すそう。
おおきんな(三重)
三重県伊勢志摩では、「ありがとう」は「おおきんな」。
語尾に「~な」がつく方言なので、「おおきに」に「な」がついて「おおきんな」になったのでしょうか。
きのどくな(富山、石川など北陸地方)
「ありがとう」と全然意味が違う「きのどくな」。
きっと旅先で地元の人に言われたら、混乱すること間違いないでしょう・・・。
富山や金沢で使う「きのどくな」は、「わざわざありがとうね」「申し訳ない」というニュアンスで使っていて、そのまま「お気の毒に」という意味でも使います。
北陸に出かける時には、覚えておくと安心な方言ですね。
だんだん(島根、鳥取、愛媛、熊本)
「だんだん」はもともと、「重ね重ね」「いろいろ」という意味の言葉だったそうです。
「だんだん(重ね重ね)ありがとうございます」と使っていたものが、次第に「ありがとうございます」が省かれて「だんだん」だけになったと言われています(「出雲方言考」による)。
10年以上前ですが、「だんだん」というタイトルの朝ドラ(朝の連続テレビ小説)があったのを覚えてらっしゃるでしょうか?
あのドラマの舞台は島根県。島根の方言からとったタイトルだったんですね。
なお、熊本弁の「だんだん」は、県の南側の球磨地方で使われている古い方言で、今ではあまり使われない言葉です。
そのほかの「ありがとう」の方言
めやぐだ(青森)
青森ではふつうに「ありがとう」を使いますが、ちょっと気恥ずかしい時、恐縮する気持ちを表現するときに使うのが、「めやぐだ」です。
直訳すると「迷惑だ」になりますが、そうではなく、「ご迷惑おかけしちゃってすみませんね」みたいな意味になります。
青森の方の控えめな性格が表れているのでしょうか。
わり(秋田)
秋田県でも「ありがとう」を使いますが、青森と同じように、申し訳ない気持ちが現れて「わり」を使います。
こちらも直訳すると「悪い」になりますが、「ごめん」や「ありがとう」の意味になります。
もっけだの(山形県庄内地方)
「もっけ」は「稀有」の意味で、「もっけだ」は「気の毒だ」「ありがとう」という意味。
申し訳ないという意味が入っているようです。
どちらいか(徳島)
「どちらいか」は「こちらこそ、どうもありがとうございます」の意味がある徳島弁。
感謝されたものの、「わたしの方こそ、ありがとうと言わなければならないのに」という気持ちから使うそう。
今では徳島でも、若い人には通じにくい方言になっているとのことです。
にふぇー(沖縄)
ひとくちに沖縄と言っても、本島と石垣島、宮古島などでは方言が全然違うそうなので、標準的な沖縄の方言としてご紹介しています。
「にふぇー」は「ありがとう」で、「ありがとうございます」と丁寧に言う場合は、「にふぇーでーびる」。
「でーびる」は丁寧に言う時につける語尾なんだそうですよ。
「ありがとうございました」と過去形にする場合は、「にふぇーでーびたん」になります。
「ありがとう」がもとになった方言
「ありがとう」は日本全国たいていのところでは「ありがとう」が使われています。
場所によっては、「ありがとう」がその土地の訛りで地域特有の方言になったりしていて、面白いですよね。
ありがとさま(山形)
「ありがとう」の「さま」をつけたかのような、「ありがとさま」。これは山形の方言で「ありがとう」です。
「ありがとうございます」になると、「ありがとさまなー」に変形します。
どうもねー、ありがとうござりす(宮城)
「ありがとう」は「どうもねー」、「ありがとうございます」は「ありがとうござりす」と言います。
そんなに標準語と変わらず、ちょっと訛ったような感じですね。
ありがとない(福島)
定番の福島弁。
「ありがとう」が「ありがとない」という反対の意味になっていて、不思議ですね。
ありがたいこんでごいす(山梨県甲州地方)
「ございます」の意味で使うのが、「ごいす」。
そのため「ありがたいこんでごいす」は「ありがとうございます」という丁寧な言葉です。
ちなみに過去形は「ごした」になります。
ありがとう(名古屋)
名古屋ではふつうに「ありがとう」は「ありがとう」のままですが、イントネーションが違います。
「り」ではなく、「が」にアクセントがつくんですよ。
ありがとっけねー(静岡)
静岡では語尾に「~け」「~けね」がつくため、「ありがとう」も「ありがとっけねー」のように、跳ねるような語感の方言になるんですね。
ありがとう(奈良)
標準語では「り」にアクセントがつきますが、奈良では「と」にアクセントがつきます。
まとめ
今回は日本全国で使う「ありがとう」の方言をご紹介しました。
同じ「ありがとう」の意味の方言でも、「きのどくな」のように全然違う言葉になっていたり、「だんだん」のように言葉が省略されて作られたものだったりして、調べみるととても面白いですね。
また方言の中でも、昔使われていて、今は通じなくなっているものもあり、言葉の変遷を感じます。言葉は生きているんですね。
ぜひ県外の知り合いやお友達と、方言を使って話してみてくださいね。