【野村克也氏著書・「小事が大事を生む」レビュー ――記事の最後に点数をつけます^^】
扶桑社からでているこの本。想定の読者層は恐らく会社員や働く人。この本の帯は真っ赤で白のくっきりした文字でこうコピーが書かれていました。「『一流』ほど、小さなことに気づく 『感じる力』こそ、すべての成功につながる」と。そしてもう一つのコピーが黒い円のバックに白い文字で「球界髄一の知将が『勝てる仕事の技術』を伝授!」とあります。ノムさんはこの本の先に仕事をする人を見ている気がしてなりません。
ノムさん大好きな「月見草パパ」です。今日はノムさんの著書 「小事」が大事を生む の魅力の紹介の2回目です。今日も読んでいただき、ありがとうございます。ノムさん好きな方と野球を話したいです。^^。
●どんな些細なきっかけでもいい。私は必死だった
この本は第2章で「小事」の源流が語られます。
ノムさんは育った環境が大変な貧乏だったこと、そこで出会った野球に心惹かれ、将来はプロ野球の選手になると決めてから次々と目の前の現実に対して、いろんな作戦をめぐらせて目標への道を歩んでいきます。
私が面白いと思ったのは、ノムさんが入学した高校には野球部員が11人しかいなくて、まともな練習もできず廃部寸前だったというところから状況を変えていくエピソードです。廃部寸前という、「その状況を何としてでも変えたかった」として、いろんな“秘策”を考えだして実行するバイタリティーにはすごいものがあります。
顧問となってくれる清水先生を味方につけるために先生のお子さんを練習試合でベンチに入れたり、その先生との距離を縮めるために生徒会長になったりと、とにかく考えて「夢」に向かって行動をするのです。そして、高校3年間でプロ野球選手めざして本格的に野球にとりくみ、プロ野球選手になることを心から応援してくれる先生の心をつかむのです。
ノムさんが高校卒業後に南海ホークスのプロテストを受けて合格してプロ野球選手としての人生が始まるわけですが、京都府北部から南海のテストを受けに行く電車賃がなかったということ。そこで味方になってもらった顧問の清水先生から、「金の心配はするな、汽車賃は任せろ。思い切ってプロテストを受けてこい。お前だったら受かるかもしれんぞ!」と汽車代を貸してくれて応援してくれたのでした。また、そのプロテストもテスト生出身の先輩にも助けてもらって無事合格。しかしプロ入りに大反対したのは苦労人のお母さんだった。そこでまた清水先生がお母さんを説得してくれたというのです。
しかし、1年目には一軍には9試合でてノーヒットでまさかの解雇通告。「耳を疑ったのは一瞬だけ。すぐに私は球団に食い下がった。『もし解雇するなら、このまま南海電車に飛び込みます!』」。球団はあと1年だけと契約を延長いてくれた。2年目でレギュラーを手にして、3年目で開幕一軍入りにつなげて、4年目にはパリーグ最多の30ホームランをマークして初のタイトルを獲る。
このことを振り返ったノムさんの言葉が熱いのです。
「失敗」にこそ成長のヒントが隠れている。「挫折」は次へのステップに欠かせない屈伸運動。そして「劣等感」は、心の火を燃やすエネルギーになる。――本当にどこであきらめてもいまの野村克也さんはなかったというハラハラするような場面の連続。自分の人生にくるもので自分が思うようにできないことなどないと勇気づけられました。
【野村克也氏著書・「小事が大事を生む」p62】
野球部を守るためにいろいろ考えて実行する。まさに「小事」が人生を作っていることがよくわかる。
●「勝手に体が反応しました」への腹立たしさ
この本のなかで、非常に印象深い野村節がでてきます。それはいつでもプロ野球選手は、プロ意識を持ち、野球のプロフェッショナルであり続けなければならないと力説しているところです。
「私の場合は、無知、無学という自覚が多くの学びをもたらし、結果的に『野球のいろは』を得ることができた。常に考え、野球を勉強してきたつもりだ」「しかし、今のプロ野球を見ていると、野球をとことん勉強しよう、専門分野を追求しようとする選手が少ないような気がしてならない」と。確かにノムさん自身の人生を振り返ったときに必死に考えて状況を切り開いた実感が伝わりますし、なんとなくプレーするようでは切り開いていけないのではないか、せっかくプロ野球選手になったチャンスを生かせ!という気持ちが伝わります。
このことは、仕事をする自分にも突き刺さります。「とことん勉強しよう、専門分野を追求しようとする」大人であるかどうか。そうありたいと思いました。
そうそう、野村節の話です。この流れで印象深いのがでます。「一つ一つのプレーに根拠をもってやってほしいと願っている。試合後のヒーローインタビューなどで、バッターから『勝手に体が反応しました』と言った言葉が出ると腹が立つし、悲しい」と。一見こういうインタビューが「さすが!」と思わせるが根拠まで考え抜いて打つべくして打ったのであれば「さすがプロ」ともっとすごいと感動できるものだと思います。そういう風に仕事に向き合うのが野村流の面白さであり、感動だと私は思います。
【野村克也氏著書・「小事が大事を生む」】
ヒーローインタビューで「勝手に体が反応しました」。球場が沸くなかノムさんは別のことを思う。
● 接点がないあのスター選手への親近感
この本は「おわりに」の数ページで、とてもノムさんらしい話で締めくくられています。
ある大選手への親近感です。それは日米通算4000本以上のヒットを重ね、40代で今もなおメジャーの第一線でプレーするイチローについてのお話です。
「イチローが自分自身を追い込み、バッティングを追求する姿は、オリックス時代からあった。それは今でも変わらない姿勢なのだろうが、当時からバットを振る量は他の選手の何倍もあり、それは尋常ではなかったという」「あれほどのバッティング技術を持った選手が、他人の何倍も努力を積み重ねる。イチローがこれまで残してきた数字や記録を見れば『なるほど』と納得せざるを得ない。『天才』と呼ばれる人間が人並み外れた努力をすれば、『凡人』の手の届かない聖域へ行ってしまうのは明らかで、当然と言えば当然の結果と言える」と、ノムさんはイチローの才能と努力の関係を語ります。
そして、「いまだに接点らしいものはほとんどない」イチローに勝手に覚えた親近感が語られます。
2004年、シーズン262安打というメジャーの年間最多安打数を更新したときのイチローのインタビューを聞いた時、イチローはこう話したというのです。「小さなことを大切にしていかないと、頂点には立てない」と。それはノムさんの野球観そのものであり、人生哲学の原点ともいえる「小事が大事を生む」考えに通ずるものだったと。「小さなことをコツコツと積み重ねた結果、偉業とも言える大記録を手にしたイチローと私は言葉を交わさなくとも想いが一つになった瞬間だったと思っている」という言葉を最後に読んで非常に重みを感じます。この言葉はイチロー選手には通じるでしょうか。きっとノムさんのことだから、通じることを考えて書かれたような気がします。
ノムさんがまだまだ元気なうちに野村克也とイチローの野球についての対談を見てみたいのは私だけではないでしょう。もっと欲をいえば、“野村監督のチームのイチロー選手”という組み合わせもきっと面白かったんだろうなと思います。あー、気がつけばこんなに二人のプロ野球人について感動して楽しんでいる私に気づきます。人に感動を与えるのがプロ。今日もしっかりノムさんワールドに感動をいただきました。
<文献データ>
『野村ボヤキ語録――人を変える言葉、人を動かす言葉』 2015年5月初版
【===月見草パパの採点=== 89点】
働く人にどうすれば成功できるのかを示した本。「感じること」「気づくこと」「考えて根拠をもって動くこと」「プロとしてどう仕事に向き合うか」などの小事が必ず大事になることをハズレなしの豊富なエピソードで示しています。どこから読んでも力になる仕事論、人生論、成功論です。
(この本のレビューは終わり)
次回は、
野村克也の本「あ~ぁ、楽天イーグルス」を2回にわけて紹介する予定です^^
ではまた^^