「せこい」という言葉を聞いたら、けち、ずるがしこいのような、あまりよくないイメージが浮かびますね。
ところが「せこい」は、一部の地域では別の意味でも使われているんですよ。

この記事では「せこい」の語源や、もともとどんな意味で使われる言葉だったのか、方言としてはどこでどんな意味で使われているのか、を調べてみました。

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「せこい」の意味は?

「せこい」には、おもに2つの意味があります。

①けちくさい、みみっちい
②悪い、醜い、下手

一般的に日常の中では、「あの人せこいよね」と言うと、「けち」「ずるい」の意味で使っているのではないでしょうか。

新小辞林 第五版には、「けちだ、しみったれている、やることがいじましい、などの意の俗な言い方」と書かれており、現在では「悪い、醜い、下手」という意味では、ほとんど使われなくなっています。


「せこい」の語源は?

「せこい」の語源には、さまざまな説があります。

もともとは寄席芸人や的屋で使われていた言葉で、芸が下手、見た目が悪いなどという意味で使われていたそうです。
それが次第に、客層が悪い、景気が悪いといった意味の隠語として使われるようになり、おもに関西を中心に広がって、現在の意味で知られるようになったのだとか。

また、「世間の事情によく通じている」という意味で使われる「世故(せこ)に長けている」が語源とする説もあります。

「世故に長けている」を略した「世故」を形容詞(せこ-い)と表すようになり、「世間をよく知って世渡りが上手」であることが、金銭的に細かいという悪い意味に転じて、「けち」「ずるい」といった意味の、俗語的な言い方として使われるようなったといわれています。

さらには、動きが焦って見える様子が転じた、という説もあるとか・・・。

はっきりとした定説はありませんが、どちらにしても、世間慣れしている、世渡り上手のような意味があるようですね。

各地の「せこい」の使い方

意味や語源をみていくと、「せこい」は方言ではなく俗語のようです。
ほぼ各地で、「けち」「ずるい」の意味で使われていますが、徳島では方言として別の意味で使っています。

関西の「せこい」

もともとが関西地方を中心に、隠語として使われていた「せこい」。
次第に一般にも広まって、おもに関西全般で使われるようになったと考えられています。

関西から波及して、福岡や広島などでも「せこい」は方言のように使われるようになりましたが、現在はあまり使われなくなっているようです。

また、四国地方の愛媛では、「せこい」は「抜け目なく厳しい」の意味で使うそうです。
「せこいことするなよ」は「抜け目なく厳しいことするなよ」。
これは、「けちなことするなよ」と同じような意味合いでしょうか。


徳島の方言「せこい」

徳島(阿波弁)では、他の地域とまったく違った意味で使われており、「体調が悪いこと、苦しいこと」を「せこい」といいます。

「久しぶりに走ったら、せこいわ(疲れたわ)」
「食べ過ぎてせこい(苦しい)」

「食べ過ぎてせこい」は、方言の意味をわからずに耳にしたら、「食べ過ぎたのにけちって、何言ってるの?」と怒りたくなるかもしれません。

徳島では狭い場所のことを「迫(せこ)」と言い、「狭い場所」=「余裕がない」ことから、「苦しい」「疲れた」という意味に転じたといわれています。

徳島の「せこい」は、誰もが知っている「せこい」とは、まったく違った語源と意味を持っているんですね。


まとめ

「せこい」についてまとめてみました。

「せこい」は方言だと思って調べ始めたのですが、俗語(スラング)でした。
古くからその地域に根付いていた言葉ではなく、ふた昔以上前に広まった、新しい言葉なんですね。

それにしても、徳島の方言「せこい」はおもしろいですね。
徳島の方と話すときは、「せこい」は「苦しい」の意味があることを知っておきましょう^^