「しわい」という方言をご存じでしょうか?
「しわい」は、鳥取や広島、山口など、中国地方を中心に使われている方言です。中国地方のみならず、関西や四国地方の愛媛、さらには、ずいぶんと離れた山梨や北海道でも使われているのだとか。
そこでこの記事では、「しわい」がどの県でどんな意味で使われているのかを、大まかに調べてまとめてみました。
「しわい」はどんな意味?
「しわい」は日本各地で使われていますが、地域によって少しずつ意味が違ったり、同じような意味で使ったりしています。
代表的な意味では、
・食べ物がうまく噛み切れない
・ケチだ
・しつこい、手に負えない
・つらい
などが挙げられます。
ひとつの方言とは思えないぐらい、いろんな意味で使われている「しわい」。
上にあげたように、ほとんどがマイナスの意味合いで使われますが、なかには「粘り強い」「根気強い」というプラスの意味で使われる地域もあるんですよ。
地域ごとに方言「しわい」の意味を調べてみました
北海道の「しわい」の意味
北海道で「しわい」は、「このお肉、しわいね」のように、お肉など繊維があって硬い、うまく嚙みきれない場合に使います。
また「ケチ」の意味でも使われ、「お前、しわいな」は「お前、ケチだな」の意味になります。
青森や岩手など東北、北海道では、「噛み切れない」の意味で「しわい」ではなく、「しなう」という方言があるそうです。
山梨の「しわい」の意味
山梨県で「しわい」は、「ずるい」「生意気だ」「うざい」「手に負えない」「ケチ」などの意味を表す言葉として使います。
同じ山梨県内でも、「しわい」ではなく「しゅわい」という地域もあるそうですよ。
調べてみたところ、山梨では、食べ物について「しわい」は使わないようです。
関西の「しわい」の意味
「しわい」は関西でも使われますが、大阪や京都などでは使われておらず、奈良県や和歌山県、兵庫県の西側で使われています。
奈良県で「しわい」はおもに「ケチ」、和歌山県では「しつこい」「強情だ」の意味で使われるようです。
また、兵庫県の西側では、食べ物が嚙み切れないの意味で「しわい」を使うのだとか。
関西地方の東側では、食べ物について「しわい」は使わないのですね。
中国地方の「しわい」の意味
中国地方では、噛み切れない、つらい、ケチなど、県によっていろんな意味で使われています。
※大まかにその県で使われる「しわい」の意味をまとめましたが、同じ県内でもさまざまな意味で使われています。ご了承ください。
鳥取の「しわい」の意味
鳥取では、食べ物がうまく嚙み切れないこと、(物ごとが)手ごわい状態であることを意味して「しわい」が使われます。
岡山の「しわい」の意味
【お肉がしわい】
方言の中には、上手く標準語に当てはめられない表現もあります。
岡山弁だと”しわい”がその例の一つです。決して硬い食べ物ではないのに、なかなか噛み切れない、飲み込めない…そんな微妙な食感を表現する言葉です。
意外と標準語で当てはまる言葉が無い、絶妙な方言です。 pic.twitter.com/4ZTWK7HTIE— 岡山の街角から│公式 (@okayamania1) January 19, 2019
岡山でも、食べ物がうまく噛みきれないことを「しわい」と言います。
また、ケチの意味でも使われることも。
広島の「しわい」の意味
広島で「しわい」は、「しんどい」「苦しい」「つらい」の意味で使われる方言です。
島根との県境にある安芸太田町では、方言「しわい」を冠した「しわいマラソン」が開催されています。
安芸太田町最大イベント!
しわいマラソン!!暑いわ🥵#しわいマラソン #安芸太田町 pic.twitter.com/VL4rGPxlY7
— コージ (@seikonomi) September 14, 2019
西中国山地の山々の中、88㎞を13時間で走り抜く、全国屈指の「しわい」マラソン大会だそう!
どれだけ「しわい」のか、気になりますね・・・。
島根の「しわい」の意味
噛み切りにくい、骨が折れる(つらい、疲れる)の意味で使われます。
また島根では、マイナスな意味ばかりでなく、「粘り強い」という良い意味でも使うそうですよ!
山口の「しわい」の意味
山口県の「しわい」は、「しつこい」という意味で使われることが多いです。
「ケチ」の意味や、食べ物が噛みきりにくい場合にも「しわい」を使います。
愛媛・高知の「しわい」の意味
四国でも愛知、高知県で「しわい」は使われています。
おもな意味は「しつこい」「うっとおしい」です。
「しわい」はもともとどんな言葉?起源は
さまざまな意味がある「しわい」。
「しわい」は「ケチな」という意味と、「噛み切れない」「しつこい」などの意味では、元々の言葉が違うようです。
「ケチな」という意味の「しわい」は、「吝い」と書く古語が起源。
三省堂新小辞林には、「しわ・い「吝い」[形]ケチだ。」と記載されています。
古典落語には、どケチ噺「しわい屋」という演目があるのだとか。
また、「噛み切れない」や「しつこい」の意味の「しわい」は、「撓い(しない)」が起源とも考えられるようです。
「撓い」はgoo辞書によると、「しなやかに曲線をなすこと。 藤や柳の枝などがたわんでいるもの」。
ここから「噛み切れない」「しつこい」「つらい」などへ、意味が広がっていったのでしょうか。
まとめ
方言「しわい」の意味や使い方、語源などをご紹介しました。
筆者は中国地方に住んでいるので、「しわい」は年配の方が使っているのを耳にすることが多いです。
ちなみに、初めて耳にした「しわい」は「ケチ」の意味でした。
「しわい」を使う地域でも、そこそこで使われる意味が違って面白いですね。
他県の方と会話をする際は、ぜひ言葉の違いを楽しんでみてください^^