「逃げ上手の若君」の主人公、北条時行を滅びゆく鎌倉から諏訪へかくまい、足利尊氏を倒すため、時行をさまざまな面でサポートしていたのが諏訪頼重(すわよりしげ)でした。では諏訪頼重とはどんな人物だったのかみていきましょう。
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足利尊氏の真価がついに発揮されます…!必読です!よろしくお願いします! https://t.co/GIdkuqlRh2— 『逃げ上手の若君』(松井優征作品)公式 (@ansatsu_k) May 9, 2021
【時行を助けた諏訪頼重の最後は?】
【出典:松井優征『逃げ上手の若君』集英社 単行本1巻第1話】
諏訪頼重は、得宗北条家の御内人(みうちびと)であり、諏訪大社の大祝(おおほうり)、諏訪大明神が宿る現人神(あらひとがみ)とされる、武将であり、神官であり、神とされる、とてもめずらしい存在でした。作中でも現人神として諏訪の人々から厚い信仰をえているのがえがかれています。武士で神社の神官で、神様…。今の時代では想像できませんね…。
中先代の乱では時行を擁立し鎌倉奪回をめざします。このとき、時行はわずか10歳。時行は才ある武将だったのかもしれませんが、頼重が鎌倉奪回の中心的役割をになっていたのでしょう。
鎌倉幕府が滅びたあと後醍醐天皇が建武の新政をおこないます。そのころはたくさんの反乱がおきています。建武の新政への不満が全国各地に存在していました。その半数が北条氏や北条氏の家臣がおこした反乱でした。京でも北条一族の北条高安(ほうじょうたかやす)らによる新田義貞(にったよしさだ)、足利尊氏(あしかがたかうじ)の襲撃計画や西園寺公宗(さいおんじきんむね)の謀反計画が発覚したりしました。西園寺公宗は北条高時の弟泰家をかくまい泰家を京都の大将、時行を関東の大将、北条氏家臣の名越時兼(なごえときかね)を北陸の大将として後醍醐天皇を討とうとしていました。この計画は公宗の弟に密告され公宗は捕らえられてしまいますが、北条時行、泰家、西園寺公宗らはそれぞれの地で連携していたものとかんがえられます。
今作では北条泰家はまだでてきていませんね。西園寺公宗ものちのち登場するでしょうか。頼重が言っていた「あるお方」とはこの二人のどちらかをいっているのでしょうか。時行はまだ泰家が生きてることを知らないでしょうから頼重が各地の北条側の人々と連携しているのでしょう。これからの登場人物たちに注目ですね。
各地で反乱が頻発したなかで大規模な反乱だったといえるのが中先代の乱のでした。時行、頼重たちは鎌倉奪回に成功しますが、わずか二十日あまりで足利尊氏に鎮圧され、頼重は43人の部下とともに自害したといわれています。頼重は中先代の乱で死んでしまうのですね・・・。
このとき自害した人々の顔は削がれ誰が誰だかわからなくなっていたそうで。だれが命を落としたのかをわからなくして時行を逃がしたのではないかとされています。げんに時行は逃げ延び、中先代の乱のあとも2度鎌倉を奪還しています。
この作品のキーパーソンの頼重が2年後死んでしまうとなると時行はその後だれに師事していくのでしょうか。それとも2年後の事件でこの作品は終わってしますのでしょうか。まだ先の見えない展開にわくわくしますね。
【頼重は一人何役?諏訪大社の大祝(おおほうり)】
【出典:松井優征『逃げ上手の若君』集英社 単行本1巻第4話】
頼重は北条氏に使える武士でもあり諏訪大社の神職でもありました。
諏訪大社は現在の長野県諏訪湖周辺にある上社(かみしゃ)の本宮(ほんみや)、前宮(まえみや)、下社(しもしゃ)の秋宮(あきみや)、春宮(はるみや)、の二社四宮からなる神社です。御祭神は建御名方神(たけみなかたのかみ)と八坂刀売神(やさかとめのかみ)です。諏訪地域で古い時代からあるミシャグジ信仰も諏訪神社の大事な信仰としてありました。
諏訪大社は日本最古の神社の一つとされるくらい古い神社で、軍神としても崇敬されていました。御柱祭も有名ですね。わたしは行ったことありませんがいつかはおとずれてみたい神社です。
上社の最高位の神職が大祝(おおほうり)とされ頼重はこの地位にいました。最高位である大祝は自身のからだに諏訪明神を宿すとされ現人神(あらひとがみ)として崇拝されていました。頼重も諏訪の地で絶大な支持をえていますね。作中では陽気でてきとうなことも言っているキャラクターですが、実際はふざけたり、てきとうなことを言ったりするのはできたのでしょうか。
また牛鬼牡丹のエピソードで狩りをすることになったときに時行が神社のものが殺生していいのかと訊いていますが、雫が諏訪明神は狩猟の神でもありがんがん採って、がんがん食べるの。といっています。史実でも諏訪地方では狩猟によってえた鹿肉などを食していたとされています。諏訪大社での神事「御頭祭(おんとうさい)」などにもその文化がのこっています。
【頼重は神さま!現人神(あらひとがみ)とは】
【出典:松井優征『逃げ上手の若君』集英社 週刊少年ジャンプ33・34号第25話】
さて頼重は諏訪明神を身体に宿す現人神として諏訪の人々に崇拝されていますが、現人神とはどういった人物だったのでしょうか。
現人神は「この世に人間の姿で現れた神」を指すことばでおもに天皇をさす言葉でつかわれました。
天皇以外にも現人神とされ信仰される神官がおり、それが出雲大社の宮司である「出雲国造」と諏訪大社の神職である「大祝」でした。
頼重は日本で3人しかいない現人神の一人だったのですね。諏訪大社が当時いかに力のある神社だったのかがわかります。諏訪の人々は諏訪大社への信仰のもとに固い結束でむすばれていたのでしょう。その人々が味方になってくれたら、時行も心強かったでしょうね。
作中の頼重は未来を見とおせる力や天候をあやつる力など不思議な力をもっていますが実際はどうだったのでしょうね。ほかの人では知りえない情報や技術などを頼重は知ることができていたのかもしれません。
【時行、雫との関係は?】
【出典:松井優征『逃げ上手の若君』集英社 週刊少年ジャンプ32号第24話】
諏訪頼重と今作の主人公、北条時行はどのような関係だったのでしょう。
作中では鎌倉幕府が滅ぼされる1ヶ月前に出会っています。時行は鎌倉幕府最後の執権、得宗北条高時の次男、諏訪頼重は得宗北条家の御内人(みうちびと)でした。御内人は得宗北条家に仕えていた武士や被官のことをさします。
鎌倉幕府滅亡のさい高時から自身の息子をたくされるほど、頼重は信頼され、実力もあった武士だったことがうかがえます。時行を諏訪にかくまい中先代の乱をおこすまでそれこそ武芸や学問、足利高氏を倒すまでの作戦などさまざまなサポートをしていたのでしょう。頼重は中先代の乱で自害してしまいますが時行は生き延びます。その後時行は最後まで戦いに身を投じ、その運命から逃げることありませんでした。頼重と出会わなかったら最後まで戦いぬくことは無理だったかもしれません。時行と頼重は鎌倉奪回という強い信念で結ばれていたにちがいありません。
「逃げ上手の若君」では諏訪頼重の娘として雫がでてきますね。父頼重の補佐をしています。たまにふざけたり、てきとうなことをいったりする父頼重に毒をはいたりかばいもせずに、父からかばって!といわれるようなクールな女の子です(笑)
史実では頼重に娘がいた記録はみつけられませんでした。中先代の乱で頼重とともに息子の時継が自害したとされており、雫は今作のオリジナルなのだと思われます。父頼重にたいする態度にたまに毒がありかわいらしさのなかにとげがあるとても魅力的なキャラクターですよね。神職と巫女、親子とは違う立場で話をしなければならないこともたくさんあるのでしょうが、えがかれている親子の会話に関係の良好さがみえます。