まだ梅雨になる前の心地よい空気の中で、北鎌倉のあじさい寺に、これから咲くであろうあじさいのつぼみを横目に訪れた「明月院」。こちらで季節の花々を楽しむことにした。

・北鎌倉の「あじさい寺」の【明月院】は「花の寺」

梅雨の季節。鎌倉のあじさいで有名なお寺は多数ある。
代表的なお寺といえば、長谷の「長谷寺」、極楽寺の「成就院」、北鎌倉の「浄智寺」、
そしてここ「明月院」である。

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5、6月の梅雨の時期、北鎌倉駅ではたくさんの方々が下車してこの寺のあじさいを一目見ようと人が流れる。とても混むので、私はその時期は明月院に行ったことがないのだが(笑)
梅雨の時期は、道端に咲くあじさいにすら目を奪われている私としては、いつか並んででも一度は鑑賞しに行くべきなのかもしれない。

ここのあじさいは青色のものが多いので、「明月院ブルー」と言われている。
青々したあじさいを見ながら、「あじさいが青色なら土壌は酸性かな?」なんて、むかし聞きかじったことを思い出しながら鑑賞してみたい。

またこの「明月院」はあじさいだけではない。季節を変えて色んな花が楽しめることでも有名なお寺で「花の寺」とも言われている。シダレザクラ、ボケ、モモ、ツバキ、ロウバイ・・。私が行ったときは春半ばで、庭園にはバラなども咲いていてきれいだったな。

そして一番感動した植物は以外にも「竹」だった!もちろん、竹の花は咲いていなかったが(数年前にすごい咲いたとニュースになっていたな)タケノコがちょこっと頭を出して可愛かったのだ。

他にも成長をしていることがわかる竹もいくつか見かけて、竹って伸びるのが早いらしいが、本当なんだと実感した。竹藪もあって和の風景も広がっていた。

・明月院は、もともとお寺ではなかった?

少しこの辺りについて調べて見ると、室町時代、ここ一帯は山ノ内上杉氏のお屋敷だった。「管領屋敷」ともいわれており、町にある跡地などにある石碑等からも確認することが出来る。

現在は明月院も北鎌倉のお寺の代表のひとつにもなっているが、それまでには歴史がある。
1160年、平治の乱で戦死した首藤刑部大輔俊通(しゅとうぎょうぶだいすけとしみち)の菩提を弔うため、その子である山ノ内經俊(つねとし)により創建されたのが「明月庵」である(まだこの時は明月院ではなかった)。
その後北条時頼が最明寺を創り、そしてそれを北条時宗が蘭渓道隆を開山として禅興寺を創建した。その際、塔頭として上杉憲方により「明月庵」から「明月院」へと、名を変えて寺が出来た。その後、禅興寺は廃寺となり明月院のみが残り今のような形となった複雑な経緯がある。

いまでこそ立派で有名なお寺のイメージもあるが、常に時代とともに一進一退を繰り返して今の均衡を保っているのかと思うと、とても哀愁を感じる。

・うさぎ多数! 別名「うさぎ寺」


入り口には細い川が流れており、そこにはうさぎとカメがお出迎え。「うさぎとカメ」では競っていた哺乳類代表うさぎと爬虫類代表のカメ(カメ、爬虫類だったんか)も、ここでは仲良くしている。
ちなみにこのお寺、うさぎがいたるところにいて、ある時は庭園のさりげないオブジェ、ある時は主張を強くしていて、そしてきわめつけは奥に本物のうさぎもいる!!

お守りの授かり所にもうさぎと宇宙のコラボの根付けが並んでいた。

ふと、「なぜうさぎ?」と思ってみると、うさぎがたくさんいるのも、お寺の名前に「月」が入ってるからなのだろうか。
昔の日本人は月にうさぎを見た。月の模様がうさぎが餅をついている姿に見えたからだという。
でも他の国ではカニだったり、女の人の横顔だったり、同じ模様でもちがうものを見た。月は同じ面しか地球には見せいないのだから面白いながらも、このように同じものを提示されても、受け取り方によっては浮かぶものも自由なのだなとあらためて感じる。

明月院は、どちらかというと厳かなイメージだったが、なかなかかわいい感じで、小さなお子様も退屈しないお寺だなと感じた。

・明月院やぐら

明月院開山堂の横にやぐらがある。鎌倉に現存するやぐらのなかでも最も大きいらしい。(間口約7メートル、奥行き6メートル、高さ3メートル)ちなみに「やぐら」は鎌倉にたくさん残っていて丘陵山腹を掘って造られた仏堂的横穴墳墓、つまりお墓の穴のこと。

ここは「明月院やぐら」と言われている。中には釈迦如来、多宝如来が浮彫されており、また十六羅漢像の浮彫もあることから「羅漢洞」とも呼ばれている。通常の独立している仏像もありがたいが、浮彫は自然の中から浮き出ているようにもみえるので、また不思議な雰囲気を感じることが出来る。
ここは明月院開基の上杉憲方の墓所ともいい伝えらえており、中央に宝篋印塔が祀られている。あらためてここでも手を合わせておきたい。

・鎌倉十井「瓶ノ井(つるべのい)」

明月院の開山堂の近くに鎌倉十井のひとつ「瓶ノ井(つるべのい)」がある。拝観していた時はふたは閉まっていたが、この井戸は現在も使えるのだそう。別名「甕ノ井(かめのい)」。

・お堂周辺は「枯山水庭園」「悟りの窓」がある

このお寺は何といっても大きいので見どころが満載だ。

お堂周辺には、枯山水庭園がある。枯山水は大小の石を山や水に例えて、水のない庭園に水のあるような空間作り出すものだ。このお寺の枯山水庭園はひとつの作品として草花が生い茂る中、お寺に溶け込み情景に趣を与える。
庭園の前には長椅子があるのでそこに座って眺めるのもいい。

そしてお向かいには本堂がありそこには「悟りの窓」のある座敷がある。その座敷から少し遠めに枯山水庭園を見るもよし、その丸窓から見える季節ごとに変わる景色(非公開の庭園)を眺めるもよし。

またこちらは鎌倉三十三観音霊場30番札所でもある。本堂におられるご本尊は聖観音菩薩だ。観音様に手を合わしてから、御朱印をいただこう。

・美術館「葉祥明美術館」

少し話は変わるが、「葉祥明(ようしょうめい)」という方をご存知だろうか。
明月院に行く途中、とても可愛らしい一軒の家があるのだが、そこがその葉祥明さんの美術館となっている。

私も以前一度行ったことがあるのだが、内装もきれいで、家具もこの家にぴったりという感じ。まるで一軒家のお家に「お邪魔しまーす」と入る感覚で、家の中もとい、美術館に飾られた彼の絵や書籍に触れることが出来る。

これは美術館で買ったポストカード。どれもほしくなってしまったが、その中で厳選したこの2枚。キャンバスに奥行きをもたらすような大らかな気分にさせてくれる絵だ。

・その「葉祥明さん」とは

絵本作家であり、画家であり、詩人である肩書を持つ芸術家だ。絵のテイストはパステルの様なカラフルで暖かい色使いの絵が有名だが、心深く感情を表現されている印象をもつ。

ちなみに葉祥明さんの詩集「母親というものは」は、リリーフランキーさんの著書「東京タワー」にも一部引用されている。
母親などをテーマにした作品に母親に関する詩。この2人のアーティストのコラボをそれぞれの母親像を体感しながら拝読してみるのも良いと思う。
明月院に行って、自然に癒された後に、少し美術に触れるのも楽しいので北鎌倉プランのひとつに組み込んで見ていただけたら嬉しい。

・アクセス

『臨済宗建長寺派 福源山(ふくげんざん)明月院』
 鎌倉市山ノ内189
 横須賀線北鎌倉駅 徒歩10分
 拝観料 300円
 拝観時間 9時~16時

『北鎌倉 葉祥明美術館』
 鎌倉市山ノ内318-4
 0467-24-4860
 開館時間 10時~17時
 入館料 大人600円 小人300円
 ※ホームページから割引クーポン券が取得できる

・最後に

花は開花時期に合わせていくのも良いが、花が咲く前のつぼみ。花が儚く散る散り際。そして再び生い茂る新芽。
花の命は短いからこそ四季折々の花を楽しむのだが、それが朽ち果てる様は、また一生懸命やってきた後の人生の有終の美の縮図のようなものを彷彿とさせる。
「老い」をつい意識する風潮がある世の中だが、老いを受け入れることもまた美しいものである。歳を重ねなければ見ることのできない年輪を重ねた巨木。
私も「若さ」はとても眩しいと感じつつも、積んできた今とこれからも大切にしたいと思いながら、月にうさぎを見たいと思う。

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