野村克也の本「あ~ぁ、楽天イーグルス」楽天解雇直後のボヤキたち

尊敬する人物・好きな人物 濃縮書籍レビュー 野村克也

【野村克也氏著書・「あ~ぁ、楽天イーグルス」レビュー ――楽天解雇直後に書かれた本であります】

「ヴィッセル神戸 イエニスタ獲得 年俸33億円」。。5月24日ニュースで各局がとりあげました。ヴィッセルの親会社が楽天。ノムさんがかつて監督をつとめた楽天なのです。

「前・楽天ゴールデンイーグルス監督」を肩書に2009年に書かれたこの本は、ノムさんが楽天監督を「解雇」された直後に書かれたもの。監督とはどういうものか、楽天というチームにどうかかわったのか、ノムさんがボヤくボヤく^^。いつの間にか球界全体の視点にたってプロ野球の未来を語るノムさんに最後は驚くような感動の場面でしめくくられます。これほど最初と最後が変わるとはっ!ノムさんの策士ぶり全開にまたまたひきつけられました。

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ノムさん大好きな「月見草パパ」です。今日はノムさんの2009年の著書 あ~ぁ、楽天イーグルス の魅力を紹介します。いつも読んでいただき、ありがとうございます^^。^^。

●楽天経営陣への不満 “意見を聞かない” “チームへの愛情が感じられない”

「まえがき」から荒れてます^^。。2009年10月21日のパ・リーグクライマックスシリーズ第二ステージ初戦の「完敗のボヤキ」から始まります。野村楽天は、野村監督就任4年目にして77勝66敗の堂々の二位でシーズンを終え、三位の福岡ソフトバンクホークスとのクライマックスシリーズ第一ステージも勝利し、シーズン首位の北海道日本ハムファイターズとの第二ステージで勝利すれば初の日本シリーズ出場のところまできていたのでした。

楽天は第二ステージ初戦は4点をリードして9回裏から、まさかの連打と満塁ホームランで逆転サヨナラ負けをしてしまうのです。そこで監督のノムさんがボヤくのです。「お見事だね…」。「監督として打てる手はすべて打った末での逆転負けである。もはや相手をほめるしかないではないか」と胸中を語ります。そして、「振り返れば、あれがすべてだった。私はノムニーニョ現状と命名したシーズン終盤からの楽天の勢いはこれで止まった」と。

この二位の結果を残したシーズン最終戦の直前、ノムさんは楽天球団社長より解雇を通告されたことを書いています。ノムさんこと野村克也監督は2005年に誕生した球団で、一年目は38勝97敗という歴史的大敗からスタートしました。ノムさんは球団二年目の06年から監督に3年契約で就任し、徐々にチームを強くして1年延長の年である09年は二位までチーム力を引き上げました。しかし、二位の結果をだしたにもかかわらずの解雇に「なぜだ!」と心の叫びがあったと書いています。

球団は「二位になれば」継続はあると言いながら、現実に二位になったにもかかわらず解雇(ノムさんはあえて「解任」と書かず「解雇」と書いていて悔しさが伝わります。。)。ノムさんはこのクライマックスシリーズを“くそったれシリーズ”と命名します。シリーズ初戦のミーティングは涙がこみあげたと。「日本シリーズに行っても続投はないといわれた。みなさんとはこれで最後。みなさんと一日でも長く野球をやりたいと思う」と語ったそうです。

さらにくやしさを書きます。「この四年間のいろいろなことが思い出された。ヤクルトでも阪神でも“一”からのスタートだった。しかし、楽天は文字通り“ゼロ”からのスタートだったといってもいいかもしれない。そこから畑を耕し、種をまき、育て、なんとかつぼみの状態までもってきた。…せめてあと一年あれば、花を咲かせることが可能なはずだった。それなのに、その日を目前にしてチームをさらなければならない。…こんなに残念で悔しいことはない」。

ノムさんは、率直な楽天球団の在り方への批判と意見を書きます。就任前にオーナーの三木谷浩史氏から「私たちは野球はまったくわかりません。一から一〇まで指示してください。そのとおりに動きます」と言われ、球団幹部から「一〇億円の補強費があり、現役バリバリのメジャーリーガーを獲得する」と息巻かれたが、その公約は果たされず(!)、「一勝もできなかった台湾投手に一億円」など編成が監督に意見も求めず勝手に「補強」をすすめるということがあったという。またノムさんは三木谷オーナーも球団社長も試合を見にこないことにも愛情があるのかを疑うと書いています。

こういうところにプロ野球チームの、もっと言えば会社や仕事の部門の運営についての大事なヒントがあると私は思いました。やはり愛情と感じる力、話し合う力が大事なのではないかと感じます。

 

楽天は、サッカーチームのヴィッセル神戸に年俸33億円のイエニスタ選手を補強。5月25日付のスポーツ各紙は大きく報じた。ノムさんはボヤいただろうか】

●楽天チーム力への不満 考えずにプレーする姿に失望 同時に素直さに可能性も

「弱いチームを強くする」という項目は野村本の楽しみがたくさんでてきます。「私が楽天の監督という仕事に魅力を感じた最大の理由は、やはり『弱いチームを強くする』のが好きだからだ」「テスト生から這い上がった選手時代、低迷しているチームばかりを率いることになった監督生活を通じて私は、どうすればとりたてて才能のない弱者が強者を倒すことができるか、徹底的に考え、試行錯誤を繰り返してきた」「それが私の野球人生であり、生きがいだった」と、総括的に語ります。

そして、楽天選手たちとのチームの日々がはじまります。「はじまりは今回も意識改革」という項目は、ノムさんファンなら引き込まれるところだと思います。楽天の初めのミーティングで選手に聞くのです。「人はなんのために生まれてくると思うか?」。たいがいの選手は答えられない、考えたこともないと言う。そこでノムさんは言うのです。「世のため、人のために生まれてくるんだよ」と。

この言葉は別のテレビ番組でも知ったことがありますが、ノムさんは「人に喜んでもらうために生まれてきたんじゃないのか。野球選手ならファンに喜んでもらうためにプレーするのではないか」と話されていました。まずは人間として成長しようという意識改革から。いつもノムさんが始めることです。こういう上司のもとで働いてみたいと思います。自分も若い人にそういうことを伝えたいものです。

楽天は当初、プロと呼べない水準だったことが振り返られ、ノムさんの言葉に注目しました。「なにより私が失望したのは、選手たちが何も考えないで野球をやっているということだった」「あるベテラン選手が『上達するには練習しかないですよ』といっていてあきれた」とボヤき、あまりにも幼稚すぎる。練習などプロならばやって当然。せいぜい一~二割に過ぎない。「残りの八割以上は応用力、すなわち頭を使って考えられるかどうかなのである。まして楽天は弱者である。野球の本質をきちんと理解し、転生や技術力に頼らない野球をしなければ強者に太刀打ちできるはずがない」と、弱者にとって何が必要かを考える姿勢。この辺りにいつもながら読みどころだなあと頭が冴えます。

ノムさんは、楽天の選手はヤクルトの選手に似ているという印象を受けたといい、「実力がないのを自覚しているがゆえに、総じてまじめだったし、素直で謙虚だった」と印象を書き、選手の真剣な姿を見て思ったそうです。「これならなんとかなるかもしれない――」と。ここまでで三章でした。続いて野村節炸裂の連続^^となる四章「楽天再生工場」へと続きます。

 

【あ~ぁ、楽天イーグルスが書かれたのは、楽天監督「解雇」直後の09年12月。冒頭からそのショックが語られる。。】

● 楽天再生工場 「ふーん。野球というのは、そうやってやるのか・・・」(ベテラン・山﨑選手が劇的な復活をとげるときの一言)

この本はこの四章からガラッと雰囲気が変わり、明るくなります。

楽天というチームは元々近鉄バッファローズの選手が多く、近鉄にはチームのためというより個人の成績重視の雰囲気が強かったことがあり、ノムさんはそこからチームプレーの弱さを感じたといいます。また向上心のある新人に野村野球をしっかりと伝えることを意識して、ついに「楽天再生工場」が始まります

ベテランも変わっていきます。来た球を打ち返す天性の才能があったが体力の衰えがでてきていた四番打者の山﨑武司選手の「ふーん。野球というのは、そうやってやるのか・・・」の言葉から始まる「頭を使った野球」、津久見高校時代から“大分のイチロー”と呼ばれ才能はあるがチームプレーができなかった鉄平のチームプレイへの変化、エースでありながらチームのために投げ切るエースの自覚が乏しかった岩隈久志投手のエースとしての自覚と変化、ノムさんがドラフトで値千金で引き当てた「マーくん」こと田中将大投手の度胸と修正力を生かした指導に応えたエースとしての成長などなど、ノムさんにぼやかれて成長していきチームが強くなっていくようすは楽天ファンならもちろん、プロ野球ファンならだれもが面白く読める話ばかりです。

ちなみに、この章で登場する楽天の選手は、上記の選手の他にキャッチャーの嶋基宏、野手の草野大輔、足で頭角を現した内村賢介聖澤諒、「安物の天才」と評される中村真人、ピッチャーで「第三の男」と評される永井怜など、本当に個性豊かな選手の「武器」を見つけて力をつける話が面白い。そこには「上達するには練習しかない」で済ませるような話は一つもなく、その生きいきとした生の話がノムさんの魅力だと思いました。

ノムさんの人間性が見えたことを一つ書かせてください。ノムさんは一年目の楽天が記録的な弱さだったと書きながら、そのときの監督であった田尾安志前監督のことをけっしてけなしていないことです。一カ所だけ田尾さんの名前がでるところが私にはなぜか光って見えました。83ページにはこういう記述があります。

山﨑武司選手の「再生」にかかわる話で、「楽天では田尾安志前監督の指導もあって一年目の途中から四番に座り、チーム最多の二五本塁打を放ったとはいえ、年齢的にそれ以上の活躍は望めないというのが一般的な見方だったと思う」と書かれています。田尾安志監督は楽天の初代監督としてチームの初戦を岩隈投手を擁して勝利しますが第二戦で0対26と記録的な大敗を喫し、結局シーズンは38勝97敗1分という記録的な成績不振で、シーズン終了後に解任されました。

その後、野村監督の四年が始まるわけですが、ノムさんも楽天の状況を身をもって知るなかで、大変なチーム力のなかでよくやったが解雇されたという田尾前監督への敬意と共感みたいなものが私には伝わり、救われるような気がしました。

(つづく 次回は6月2日公開予定)

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