姫路城は2009年秋から約5年半「平成の大修理」が行われました。
そして2015年3月に大修理が終わり、お披露目されたその姿を見て誰もが口にしたのは
「白っ!!」という言葉でした。
その白さは正直違和感を覚えるほどだった記憶があり、地元民からは「ちょっとやりすぎでは・・?」とか、姫路城の別名白鷺城を文字って「白すぎ城」と言う人もあったようです。
そこで今回は姫路城はなぜ白いのか・・・という疑問にせまってみたいと思います。

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姫路城の白さの秘密

姫路城は「白漆喰総塗籠造(しろしっくいそうぬりごめづくり)」という、防水や瓦を留めるために漆喰を使う方法を採用しています。
大天守の城壁・屋根・軒裏など、屋根瓦以外で外部に露出している部分全てに白漆喰を塗っているというのが姫路城の白さの秘密なんですね。

大修理後の姫路城

ちなみに「白漆喰」とは顔料を混ぜないで使う漆喰のことで、大修理で使われた漆喰の材料には消石灰・貝灰・苆(スサ)・角叉・砂などが使われ、これを混ぜ合わせて傷んでいる場所ごとに修理方法を決定して作業が進められました。

土壁のままだと風雨に弱いので、漆喰を使うことで防水性が高まるほか、燃えにくい素材を使っているため防火の役割もあります。
姫路城も鉄砲攻撃などによる延焼を防ぐ目的で、代々この白漆喰総塗籠造を採用してきたのです。

昭和の大修理から半世紀、傷みが目立つようになってきた姫路城

平成の大修理前には昭和の大修理が行われ、その際に「50年は保つことができる」とされていましたが、大修理から45年経った頃から漆喰や材木に予想以上の劣化が見られるようになりました。
漆喰は黒カビに弱く、浸食が進むと色が落ちてくるそうです。
そう言えば、平成の大修理前の姫路城は城壁や屋根瓦が黒ずんでいるという印象でした。

大修理前の姫路城

だから修理後の白さに違和感があったのですが、この白さが本来の姫路城の姿だということになりますね。
その白さを取り戻すべく計画された平成の大修理では壁面の修理と補強、瓦の葺き直しを重点的に修理を進めることになりました。
修理は屋根修理・大天守城壁の漆喰塗替え・構造補強を重点的に行われました。
平成の大修理の概要

○大天守
1~4層は表面の漆喰の修復と5層は下地から全6工程かけての修理が行われました

【全6工程詳細】
①小舞(こまい)=貫や細かく割った竹などを縦横に組んで縄などで編んだもの。下地のような役割
②荒壁=小舞に粒子の大きい土と藁スサを水で混ぜて作った荒壁土を塗る作業
③大斑(おおむら)直し=荒壁が乾燥後、土の収縮によって表面にできたひび割れを荒壁土に粒子の細かい砂を加えたものを塗っていく
④中塗=荒壁土よりも細かい粒子の砂と土、藁で作った中塗土を塗っていく
⑤小斑(こむら)直し=壁土が乾燥してからさらに全体をムラなく塗っていく
⑥漆喰塗

○屋根瓦
屋根の修理ではなんと75000枚の瓦の葺替えがされました。
これも1枚1枚チェックして傷み具合を調査して再利用できるものとそうでないものを選別したそうで、本当に大変な作業だったことが想像できますね。
大修理後の姫路城を見たときに城壁よりも屋根の白さが目についたのですが、この屋根の白さの秘密が瓦のつなぎ目に施された「屋根目地漆喰」という処理方法にあります。
姫路城の瓦は平瓦と丸瓦を交互に組み合わせていて、丸瓦に継ぎ目にこの屋根目地漆喰が施されています。
屋根目地漆喰も風雨に強いと言われていて、その処理方法としては下塗・中塗・上塗の3工程で仕上げるというもの。
その分とっても手間がかかりますが、この3工程を経ることでより漆喰が施された部分が盛り上がり、更に白く見せることができるのです。

瓦に施された屋根目地漆喰

大修理期間中の素屋根の設置

平成の大修理では大天守の漆喰塗替えと屋根の修復がメインになっていたので、漆喰を除去した大天守を風雨から守るために期間中は素屋根と呼ばれるものでお城全体をすっぽり覆い隠すことになりました。

地元民から「食パン」「牛乳パック」と呼ばれていた素屋根

この素屋根、箱をすっぽり被せただけに見えるのですが、実はこの設置には大変気を遣う作業が伴いました。
というのも、姫路城は地面も特別史跡になっているため、杭を打つことができないので、素屋根だけの重さで建つ必要があったのです。
そうしたことから、素屋根は地面の上に基礎を築くことになったのですが、地盤を傷めることは許されないため、コンピュータによる地盤の解析などが行われ、素屋根に使う鉄骨は細くて軽い鋼材にするなどの工夫がされました。
姫路城高さが約46.35mあり、大天守だけでなく小天守もあるため、鉄骨がお城を縫うように組み合わされるという他に例を見ないほど複雑な素屋根になりました。
世界遺産であるが故に慎重さが求められることになったというわけですね。

平成の大修理が終わってから3年が過ぎました。
熟練の職人の技と現代の技術を駆使して蘇った姫路城の白さは、防カビ剤の導入によって5年は保つことができると言われています。
真夏の日差しに白が映え、とても美しい姿を見せてくれている姫路城へ是非遊びに来て下さいね!

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