【野村克也氏著書・「小事」が大事を生む(2015年5月発行)】
「野村克也の本のネタは使いまわし」という人をネットでチラホラ見かけることがあります。。確かに、それはそうとも言えるかもしれません。しかし、生粋の野村ファンの私としては、幾分悲しく感じてしまうこともありますのであえて言いたいことがあります。
それは、「ノムさんの本を【感じて】もう一度読んでみてほしい」ということなのです。しっかり読んでみると、一回一回の趣旨は全部微妙に違うんです。今回紹介する『「小事」が大事を生む』には、まさにその「感じる力」を熱く語った内容で、“成功者によるビジネスの書”としても学ぶところが大きいと思いますし、私もサラリーマンをしながらとても学ばせて頂いております。そんな内容を日夜戦う皆さんにお届けできたら執筆者冥利につきます。
ノムさん大好きな「月見草パパ」です。今日からノムさんの著書『「小事」が大事を生む』の魅力を紹介します。書いているなかで実は私が、いわゆるひとつの~、、「あの人」のファンでもあったことも(。。!)流れで語ってしまうことに^^。では今日もノムさんワールドを楽しみましょう^^。
●ノムさんが仕事に向き合うとはどういうことかを語る本
本の中身に入りましょう。この本は110冊を超えるノムさんの本の中で、最も、仕事、働くということについて書かれた本で貴重だなあと感じます。本の全体は当然、ノムさんの野球人生というフィルターを通して語られていますが、本の冒頭の「はじめに」でノムさんが筆者としてのねらいを語っています。
「本書では『小事』と『大事』の密接な繋がり、そして日々の積み重ねの大切さを紹介したいと思う」「ビジネスライフをより豊かなものにするための、そして人生の成功を掴むための、一つのきっかけになってくれればと願っている」と。ノムさん自身の幼い貧乏な時代からどうやって成功をつかんでいったかが物語を読むように書かれているのも一つの特徴です。
それらは、時々のチャンスをつかめるかどうかの分岐点に何を考え、判断し、行動したかのエピソードとして無数に語られています。本当に個々に見れば「小事」ばかりなのですが、それが「大事」となって大きく動いていくのが面白いところです。
例えば、「練習に取り組む時の心構えひとつが、将来的に大きな差を生む…テーマをもって練習しなければ、『練習のための練習』に」なってしまうという話など大事だなあと思いました。ノムさんは、現在メジャーリーグで活躍するダルビッシュ有が語った「練習は嘘をつかないって言葉があるけど、頭を使って練習しないと普通に嘘をつくよ」という言葉を紹介し、「なかなか良いことをいうものだと感心した」と語るのですが、スッと頭と心に入ってくるお話で、さすがなだあと思わされます。これすぐに使えそうじゃないですか?^^
●「鈍感は悪」とまで言いきるのがノムさん
私はこの本の目次を見て、まず第三章の初めの節、「なぜ『鈍感は悪』なのか」を食い入るように読み始め、通勤電車の往路で一気に章を読んでしまいました(だいたい20分ですね^^)。
いわばこの本の一番の勘所がここにあると私は思いました。ノムさんは力説します。――「感性がなければ、視野が狭くなる。些細なことに気づくことはないだろうし、結果的に物事の本質を見失う可能性がある。感性の乏しい人間、それすなわち『鈍感』な人間。『人間の最大の悪は鈍感である』その言葉を、私はこれまで何度も使ってきた」と。普通、鈍感な人間に対してここまで言わないだろうし、そうとうきつい気がします。
しかし、ノムさんの経験と確信から語られるから学びとして続けて読むことができます。「一流と言われる選手のほとんどは、感じる力に長けている。感性が磨かれているものだ。また、チームの中心選手にしても同じことが言える。なかには目や耳を疑いたくなるほどに感性の乏しい選手もいるものだが、多くの場合は感じる力を持っていると言っていいだろう」。これは、仕事や人間関係でそのまま生きる話ではないかと思いました。たった一つのお礼の言葉、メール一つで「あなたを忘れていませんよ」と伝えることもできますしね。些細な何かの変化に「気づく」、そして手を打つって、すごいことですよね。本当に細かい「小事」ですが、感じる力は大事にしたいものです。
それでこれは私の解釈なのですが、そういう「感じる力」って、それを使った見返りをもとめるのではなくて相手の気持ちを知ろうとするだれでもできる努力ではないかなと思います。だから、それができない人間は「悪」とも言えるのかなと思いました。まあ、逆からものを見れば、必ず「小事」は「大事」につながるから面白いのだと思います。
【野村克也氏著書・「小事」が大事を生むp76】
「なぜ、『鈍感は悪』なのか。感じる力の大事さをこの本はとりわけ押し出している 】
● 天才・長嶋はバットに一切のこだわりを持っていなかった
さあ、この本でも「お約束」の対決が出てきます。そうミスターこと長嶋茂雄さんとの対決のエピソードである。
「『気づく』選手は知らず知らずのうちに一流選手になる」という節でミスターが登場して、また天才ぶりが語られる。一流選手のバットには研ぎ澄まされた感性を感じるとして、とことんバットの形状や感覚にこだわるという話をしたうえで、「無論、例外もある」としてミスター・長嶋茂雄さんの話に続きます。
長嶋はバットに一切のこだわりを持っていなかった、と。「目の前にあるバットを持って素振りを始める」「バットの向きはお構いなし」「バッターボックスに入ると、バットをクルクル回す。木目なんてまったく関係ない。あくまでも自分の“リズム”を大切にする。おそらく長嶋は『芯にボールが当たりさえすれば、バットは折れない』、それぐらいの意識しかなかったのだろう」「その感覚で彼はヒットを量産した。やはり長嶋は、異色の天才バッターであり、他にはあまり例を見ない一流選手だったと言わざるをえない」と、この節はすっかりミスターの才能を賞賛して終わっています。
ノムさんのどの本でも共通しているのは、長嶋茂雄さんに対して強烈な印象や思いを書きながら、必ず天才として評価していることです。「いわゆるひとつの~」は、往年の長嶋さんのよく使う言葉だが、そのあとの言葉の多くは理論ではなく天才としてのカンピューターによるものです。それでミスターのファンはそれも含めてミスターが大好きなんだと思うのです。実は私自身、ノムさんと全く違うタイプの天才としてミスターが大好きなんです(あー、書いてしまった笑)。ノムさんが決して長嶋茂雄さんを人格的に貶めたりしていないことはいつも注目したいところです。
ちなみにこの本では、ノムさんとミスターの貴重な“直接対決”の場面もあってこれが萌えます(私がこのお二人が好きだから特別!)。「B型の血を実感した長嶋との対戦」というノムさんのファンサービス精神にあふれた節で、キャッチャーノムさん(B型)が打席に入ったミスター(B型)に「ささやき戦術」でペースを乱そうとしても、自分の世界に入り込む長嶋は人の話をまったく聞いておらず、声をかけてもトンチンカンな答えしか返ってこなかったとか。。
ある試合でノムさんが「長さん、最近、銀座に行ってるの?」とささやくと「ノムさん、このピッチャーはどう?」と全く会話にならず、とにかく自分のペースで、自分の世界でモノを言うのが長嶋だったという話。
※ちなみにこの時代は長嶋茂雄のことを親しみを込めて「長さん」(長嶋の長を音読みで「チョーさん」)とよんだ。「ミスター」はもっと晩年に、「ミスタージャイアンツ」→「ミスタープロ野球」→「ミスター」と変遷して定着したと思われます。
【野村克也氏著書・「小事」が大事を生むp147】
「長さん、最近、銀座に行ってるの?」「ノムさん、このピッチャーはどう?」――まったくかみ合わない会話に萌え萌え^^
いまどき現役時代の長嶋茂雄さんとの会話を楽しく語れるのはノムさんぐらいではないかな?。これを書いていて思ってきたことがあります。
実は、、、野村克也の本というのは長嶋茂雄ファンが読んでも面白いのかもしれないと。。^^
【『伝説の長嶋茂雄語。』小林信也著書】
「魚へんにブルーと書いて鯖」という伝説の言葉はもちろん、「野球はデータがすべてではありません。それにまさる時の勢いと瞬時のジャッジが必要です」とか、もろにノムさんを意識している「天才」視点からの言葉もしっかり紹介していて面白い。きっとインタビュアーが狙ったんでしょうね。これは引き出した方にあっぱれな思いです。】次回は、野村克也の本「小事が大事を生む②」ノムさんが賛歌を贈るあの選手の予定です。^^