藤城清治さん【光と影の世界】表紙の裏にはかわいいこびとが!
色彩あふれるカラフルな部分に注目!

・好きなことは「絵を描くこと」

子どもの頃、絵を描くことが大好きだったと、そのように言っていた人はたくさんいると思います。もしかしたらこれを見ていただいているあなたも、そうだったのではないのでしょうか。

三度の飯より絵を描き続けたり、「ドドドッ」と効果音を付けて、ひとりごとを言いながら絵の中に入り込んで、たくさんの物語を想像して夢中になって絵を描いていたあの頃。そしてそれは私も同じでした。

ご飯を食べて、テレビも見ずに宿題もやらずに・・(笑)ただひたすら絵を描き続けました。それが美術的なものでも何でもない、下手っぴな漫画のような絵でしたが、ひたすら飽きもせずに毎日描き続けることを繰り返しました。
そこには打算的なものはなくて、それが何になる訳でもないのですが、そんなことはまったく関係ありません。純粋にただ好きだから描く、それだけでした。

よく考えると子どもの集中力ってあまりないと言われますけど、どの子も本当に好きなことをしている時、まるで時空を超えるほど!(これは言い過ぎですけど(笑))夢中になったことってきっとあると思います。
もちろんそれは絵に限らず、夢中で歌ったり、夢中で野球したり、夢中で外で遊んだり、夢中でゲームをしたり・・!

ですが、だんだん大人になって来ると環境も変わり、外からの刺激も魅力的で、そうした内側との対話から少しずつ離れていきました。
私も高校からはガッツリ運動部に入りましたので、絵からは少しずつ遠のいていきました。

そしてしばらくしてまた働くようになって、どこで原点に帰るのかは分かりませんが、また趣味ながら大人になって絵を少し描く機会を作ってみたり、美術館や展覧会に触れて、やはり絵はステキだし、描くことも楽しいなと改めて思い出すようになりました。

でもあの頃から変わらずずっとひとつのことを続けていたら?

幼少期から脇目も振らずに絵を描き続けて、素敵な世界を見せてくれるアーティスト。
それが「藤城清治さん」です。

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前回から書籍の「光と影の世界」について見てきまして
(こちら「藤城清治【光と影の世界(本)】①白黒編by獅子蔵-b」

主に白黒の魅力について語らせていただきました。
白黒はまた藤城清治さんの原点的なところなので、再度私も振り返ることができ、作品への熱が上がってきました!

ですので引き続き書籍「光と影の世界」を読みながら、今回はおもに現在に近い作品であるカラフルな色彩あふれる影絵について、本のご紹介をしていきたいと思います。

・白と黒の世界から色彩あふれる光の表現へ

黒と白のモノクロの影絵の時代、ぼくはシルエットの形の美しさを模索していた。けれども影は光がなくては生まれない。影の源は光だ。だから影絵をどんどん追究してゆくうちに、結局、光を追究してゆくことになった。

カラーの影絵を作り始めると、白黒のときには気づかなかった逆光の美しさ、本当の生の光の美しさを、感じた。ぼくは生の光としての逆光線が持つ性質の研究にのめりこんだ。
そしてようやく逆光の美のメカニズムが少しわかってきたと思うまでに、10年以上の月日が経っていた。(『光と影の世界』22頁引用)

モノクロの作品とカラーの作品が比較されて本の中でも紹介されています。

白黒の時もとても味があり良かったですが、カラーの作品は白と黒のグラデーション プラス、色のグラデーションも加わり、より鮮やかに世界を作り上げられていて、表現の幅が広がり可能性が広がっている、そのように思いました。
こうして白黒の影絵で基礎を固めつつ、試行錯誤を重ねて今のスタイルを確立されていきました。

本を読み進めていくと影絵に一番魅了されている藤城清治さんが、影絵の魅力や表現の仕方について語られる部分があるのですが。。とても熱い!!そして作品へのこだわりはまさに職人気質で、その文章を読むだけで情景が浮かぶようです。

やはり原画の方が良いから本物を見て欲しいけれど、光源が必要だから絵画のように簡単には見せられないんだよね、というジレンマ!
「こんなに素晴らしいのに!」
と、フィルムの重なりによる光の透過度だからこそ生み出せるフィルムの色合いなど、作品を生み出すことに対して緻密に探求されている事を語られております。
私もこの書籍でも作品は見ておりますしポストカードもたくさん持っていますが、後ろから光に照らされた作品の幻想的な空気感はどんなに技術が発達しても写真では完璧には作り出せないかもしれないなと思いました。

(略)印刷は原画のよさの片鱗が伝えられればいいし、その印刷されたものをみているうちに、原画の無限の美しさが想像されにじみ出てくるようなもので、本来あるべきではないだろうか。(『光と影の世界』35頁引用)

展覧会で鑑賞した時の衝撃や感動は、このような想いで作られた作品だからこそ。日々の研究を積み重ねた結果なのですね。
だから初めて原画を鑑賞した時、複雑でどのように作られているのかわからないと思いましたが、、それはわからなくても当然だなと思いました。

そして彼の作品に対するストイックさは作品以上の魅力にも感じてしまいました。
このように何かを目指して情熱を注ぐ気持ちがあるって本当に素晴らしいですね。
改めて、本物を目で見ることができたことにも感謝だなと思いました。

そんなことを感じながら、本をめくるたびにたくさんの作品に出会えます。
せっかくなのでここでこの書籍に載っている作品で2つほど個人的に目を引いたものを挙げて、私が素敵だなと思ったところを解説させていただきますね(笑)


(『光と影の世界』39頁引用)

1つ目は「こねこのルミちゃん」という作品です。

それはパッと見ると半分以上真っ黒で、その黒だけに集中してみると平面の黒がドン!と切り出されているだけのようにも見えるのですが、少し視点を変えて、子猫に目を向けて見てください。すると、その黒の塊は透視法のような効果を生み出し、その中心に子猫がいることで、とても奥行きのある作品の印象に早変わりなのです!なんだかだまし絵のような感じで面白いです。

月も草に覆われているのですが、他の部分の光が抑えられているので、見え隠れする月明かりの光が強調されて、とても幻想的な印象を持ちました。こういうのが藤城マジックだなとつくづく思います!!
この原画自体もどのように見えるのかなと想像を膨らませるととても楽しいです!

(『光と影の世界』56-57頁引用)

2つ目は「クリスマスの鐘3」という作品です。

これは、、本当に凄いですよね!!緻密で細かい作品はたくさんありますが、ため息ものです。
教会のステンドグラスから優しい光が射し込んできて、その時の部屋の光の感じとか、その光からホコリが見えてきそうなほどリアルです!
この原画もまだ目に出来ていないのですけど、これは圧巻でしょうね!!

ある意味、教会などステンドグラスも外からの日光が屋内に差し込むという仕組みは影絵も同じですので、こちらの作品は光源が太陽の役割を果たしているのでまさに本物のように見えますので、教会に行かずともその雰囲気を感じることができそうです。

さらによく見ると、この影絵に描かれたステンドグラスの中にはキリストがいて、絵の中の物語の中にもまた物語があるのが面白いですよね。実際にステンドグラスがある教会などに行くとキリストのモチーフのものがあり、キリストの生涯が描かれたりしていますから、本当にこの作品が細かくとてもリアルだということも感じます。

明るい光と暗い光のバランスから、貼り込む材質の透過率まで、緻密に計算されて出来上がる、カラー影絵。
(『光と影の世界』24頁引用)