「雨にけむるDOWN TOWN ROAD はまりすぎのLOVE SONG
 色あせた記憶に また心がつまづくよ」

氷室京介のバラード「LOVER’S DAY」は、切ないほど胸に響いてきます。
終わった恋でも、もう決して戻らない恋でも、誰かを想う気持ちはかけがえのないもの。
そう感じさせてくれる、とても美しい曲です。
たとえ成就しなかったとしても、ともに生きてきた時間に、嘘はないのです。
「あの頃」一緒に刻んできた時間は、お互いの人生そのものなのです。

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どんなに素晴らしい芸術作品であっても、受け取り手によって様々なかたちに変わっていくものだということが、分かってきました。
そして、それを許せる自分にもなってきました。
わたしの思う「LOVER’S DAY」もまた、わたし独自のものだと感じています。
それは一人一人の感性や心象風景に委ねられる部分が大きくて、響く場所も響き方も、一人一人違うものだと思うからです。

「あなた」にどんな風に響いて、どの場所に届いたのか。

いつか聴かせてもらえたら嬉しいと思いながら、「LOVER’S DAY」の世界に触れていきたいと思います。

「思い出している」のではなくて、「忘れられない」

いつもなら鮮やかで賑やかな街が、霞みがかってぼんやり感じられる。街の色も声も、雨が吸い込んでいくみたい、とても静かに感じられる。
彼は、雨に濡れる都会の雑踏の中、ふと流れてきた懐かしいLOVE SONGに、一瞬にして心奪われて動けなくなってしまった…。
わたしは、そんな場面を想像しました。
こんなにたくさんの人たちが行き交うスクランブル交差点で、自分だけが「今」から置いてきぼりで、どこか追いつけずにいる。
雨にけむり、ぼんやりとヴェールがかかる街で、追いつけない自分だけが、くっきりと浮かび上がっているように感じられて。
そういう自分を、少し離れたところから見つめている自分自身を感じて、立ちつくし、動けない。

(あの日から随分と時は経ったのに、心は追いついていなくて)
(色あせたはずの記憶が、本当は全然、色あせていなくて)

彼は大切な人との日々を懐かしく「思い出している」のではなくて、「忘れられない」のだということが伝わってきます。

何気ない毎日にあったい愛おしいもの
見果てぬ夢を大切に育み、分け合って生きてきた恋人との別れを感じさせる歌詞の後、

「oh my lover’s day 今も胸に残る あどけない仕草に…」

という、別れた恋人の面影を表現する箇所があります。
(初めて聴いた時)、その彼女の「あどけない仕草」が一番、胸に残っているんだと新鮮な驚きを感じたことを覚えています。
目を閉じて彼女のことを想う時に、優しさよりも、楽しさよりも、時々見せる「あどけない仕草」が、一番愛おしくさせるのです。
何気ない日常だった恋人との日々。
そういうところにあった愛おしいまなざしを感じさせられて、胸が切なくなります。
多くを表現しない短い歌詞だけれど、恋人への想いが溢れているように感じるのです。

遠回りのMY LIFE

見果てぬ夢を大切に育み、分け合って生きてきた日々。
彼の夢を叶えることが、彼女の夢でもあったのでしょう。

彼は、そっと支えてくれる彼女に対して(遠回りさせて、ごめんね)という気持ちを抱くようになります。
(彼女の本当のしあわせ)について考えていくと、自分と一緒にいることではないのかも知れない、そんなことも思い始める様になります。
自分の夢のために、彼女を待たせていることに心を痛めていくのです。

いくつもの季節を一緒に過ごしてきた恋人との日々に終止符を打ったのは、彼の方だったと思います。
ずっと一緒にいたいという気持ちを、彼女を大切に想う気持ちで打ち消し、別れを選んだと思うのです。

my lover’s day

恋人との別れを決めて、自分の夢へと邁進した彼。
夢が叶ったとき、一番そばにいて欲しかった人が隣にいない。
本当は一緒に夢を叶えることだって出来たかも知れないのに。
もう、あの季節に戻ることはできない。
あのあどけない仕草を、感じることも、見ることもできない。
あの愛おしいあどけない仕草は、他の誰かにだけ見せているのかも知れない。
彼女のことを想って、想うからこそ、別れを選んだはずなのに、それを悔やんでいる。

「oh my lover’s day もしも君が同じ気持ちでいるとしたら…」
「oh my lover’s day 又 あの日の二人に戻ることができたら二度と離さない…」

あの日から随分と時は経ったのに、心は追いついていなくて。
色あせたはずの記憶が、本当は全然、色あせていなくて。

今に置いてきぼりになったように感じた雨の日の街。
それでも、あの日に戻りたいと感じさせてくれるほどに想い合った恋人がいてくれたことは、変わらない。
あの頃の日々があって、今の彼がいる。

(こんなに想ってくれて、こんなに想わせてくれて、ありがとう)
(出逢ってくれて、ありがとう)

もう会うことがない恋人だった彼女も、そんな風に感じているかも知れません。

そんな風に思うのです。

読んでくださって、本当にありがとうございました。

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