「何も無いと思っていたら、本当はこんな世界が広がっていたんだ!」
「作品」と「光」と「影」が揃ってはじめて輝き出す世界。
真っ暗で何も無かった空間に灯るロウソクの火のように、その場を明るく照らしたならば、見えなかったものがあれよあれよと見えてきます。
その事によって、見たくないものも一緒に見えてしまうかもしれないと思うと、知らない方が良かったと感じることもあるかもしれません。
でも・・やっぱり、そこにあるのであれば、知らないよりは知れる方がいいかなと思います!
本当は手の中に持っていたものに改めて気付くような感覚、それは実際に「何」かを探してみないと気付かないものなのです。
・21年間持ち続けた思い
2年前の2016年に発行された、藤城清治さんが21年の歳月をかけて創り上げた92歳のときの作品『アッシジの聖フランシスコ』が今回のヒーローです!
すでにいままでも影絵の原画自体は普通の作品として公表もされているものもありますね。
そのようにして作品と想いと知識を積み重ね、思考錯誤しながら、今までの点と点を線に結び付けた21年間分の集大成です。
私もこの絵本と出会ったのは、その2年前の「銀座 教文館」の2016年度の影絵展に行った時でした。ちょうどサイン会も行われた日で、私はこの本を購入し、この本にサインしていただきましたのでよく覚えております!
その時の記事はこちら
→藤城清治【影絵展サイン会2016銀座 教文館にて】心の準備編
→藤城清治【影絵展サイン会2016銀座 教文館にて】肉眼焼付編
その時が嬉しすぎて、しばらくはこの絵本にしていただいたサインばかり眺めていましたが(笑)ぜひ、この絵本自体の熱量について感じきってみたいと思いました。
・絵本と画集の大型本!!
ちなみにこの絵本は結構大きくて横30cmくらいあります!!
『アッシジの聖フランシスコ』(30cm物差しを添えて)
本を開くと、はじめに「賛歌」が載っています。
そしてそのページを上下に開くと縦60cmの聖フランシスコ像になるのですが、これがなかなか圧巻です。また2ページほどめくると「アッシジの街並み」として、横80cmのパノラマのページもありまして、改めて画集としてもかなりの満足度ですし、大きいので迫力もあるなぁと感じました。
ちなみに内容としては、
影絵の画集でもあり、
絵本でもあり、
物語でもあり、
伝記でもあるような、作品ですね。
なので、人によっては、少し宗教観が強いと受け取られるかもしれません。かもしれませんが!
まずは先入観なく、1つの物語として読んでいただくと、誰にでもスッと受け取れるそんな作品だと感じております。つまりは、宗教観はありますし宗教画だとも思いますが、真意はそこだけでは無いのだということです。
・「聖フランシスコ」の愛の心 の意に沿って
比べることではないかもしれませんが、昔と比較してみれば一目瞭然、物や移動に関しては便利なものが増えて生活も豊かになり、たくさんの物が持てるようになり、私たちは結構幸せな生活が送れています。でもそのことで、一番手元にある幸せを見逃しがちにもなっているのではないかとふと考えることがあります。
日々時間に追われて忙しく働く中で埋もれてしまったもの。
この絵本を読んでみるとはじめは今自分の住んでいる世界とは別世界で特別な人のことを書いた「物語」として認識されるかもしれません。
ですが、読めば読むほど内容と影絵からそれは決して特別なことではないということに気づくようになると思います。
そしてそれは、この話を見習ってこの「聖フランシスコ」と同じことをしよう、というわけでもありません。ひとりひとりの進むべき道があるのだから、各々がそれぞれ進めばいいのです。
それよりももう少し漠然とした、「想い」・・「祈り」のようなもので、誰にでもある心の中の温かいものを思い出せる、今一度立ち返ることが出来る、そのきっかけの懸け橋となるような作品への想いを感じました。
藤城清治さんが21年間、寄り添いながら仕上げた作品。聖フランシスコの思いとともに過ごした日々も伝わってくるような気がしました。
でもまずは本当に先入観を入れず何も得ようとはせず、欲も捨てて、純粋に読んでみるといいなと感じられる、そんな作品です!!(絵本とはいえ、つい気合が入ってしまいますね(笑))
・影絵と文/藤城清治
こちらは表紙を見ても分かりますが、なんと影絵と絵と、文までも藤城清治さんが作られておりますので、本当に丸ごと「渾身」の一作です!
文章は、藤城清治さんのいつもの語り口調ではなく、物語の言葉なので、その辺りもまた楽しむことができるのではないでしょうか。
ちなみに先ほども書きましたが、私は以前この本にサインを書いていただいたので、この本を開けば、1ページ目にサインがあり、懐かしい思い出もつまっています。
もちろん市販の通常の絵本にはサインは書いてはいませんが、ぜひその一ページ目の用紙の色から楽しんでいただければと思います!
また全体的に藤城清治さんのかわいらしいキラキラした作品とはまた雰囲気が違い、しいて言えば「いぶし銀」でしょうかね。もちろんキラキラと素敵な部分もこの本にはたくさんありますが、どちらかといえば大人の作家で画家の一面を感じられる作品で作品からも超絶技巧が伝わってくる感じですね。
・アッシジって?
「アッシジ」とは、イタリアにある都市のひとつです。イタリアを長靴を履いた足に例えるならば、ちょうどふくらはぎの真横くらいの位置にありますよ。ぜひ、調べてみてください♪
ここは聖フランシスコの出身地です。有名な建築物として「サン・フランチェスコ大聖堂」があり、聖フランシスコが亡くなって2年後から建築されたものらしいのですが、この聖堂とその関連する場所などが世界遺産に登録されています。
聖堂にはフレスコ画が多数あり、ジョットが描いた「聖人フランチェスコの生涯」が壁画として、あるそうですがそれが大作で28枚もあるそうです!
いつか見に行ってみたいものですが、いますぐにはいけませんので、まずは藤城清治さんの作品をみて世界観を楽しみましょう。
・絵本(絵と文)の読み方もひとそれぞれ
絵画鑑賞の時も感じることですが。
昔は絵本をどのように見ていたのかなと思うことがよくあります。絵を見て文を読み、文を読んでは絵を見ますが、文字を読んでいると話の誘導があるので絵よりまずは文章に組み込まれた言葉1つ1つに心が響きます。
そして状況が理解できたところでその絵を見るとそこに本物の解釈が合った内容が視覚として飛び込んでくるので、その瞬間、内容を意図することが出来て話も情景も見えてきて、興味深くかつ効率的に作品を鑑賞できるわけですね。
できるだけ初めは、まっさらな気持ちで先入観なく読みたい!と思うと、文字だけを先に読んだり、絵だけを見たり、またはバランスよく読んだりもできるなと思います。
なので結局は夢中になってしまえばそんなのは関係なく、その時目についたものがどんどんとびこんでくるものですよね。(笑)
そのように物語にどっぷりと浸かっていける子ども心はいつも持ち合わせていたいなと常日頃感じています。
・序奏から続く物語へ
今回は序奏編ということで主要部分の導入前の準備、という感じで絵本の外側を主に見てきましたので内容にはあまり触れられてはいません。
次回は主に絵本の中に入ってまた私自身も新たな発見をしながら読んでいけたらいいなと思います!